だっサイくん

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だっサイくん 短編小説1話

⭐️「だっサイくんと埼玉県のいいところ」

 登場キャラ: ムサシ 東京都 りゅうごどん 鹿児島県 ひも根 島根県 うしみん 香川県 なしげんちゃん 山梨県 グンバードちゃん 群馬県 白兎隊 福島県

ハムミ 秋田県 ノースマンタ 北海道 みやかい 宮城 らくなちゃん 神奈川県 トチロウ 栃木県

海に囲まれた小さい島国のもっと小さいところ、

そこに47の小さい地域。

そして、その地域のひとつひとつには、

47の動物たちがいたのでした。

だっサイくんもその動物のうちのひとり。

小さいちいきの1つ、埼玉県にいます。

今日はぽかぽか陽気なので、東京都にお散歩に来ていました。

だっサイくんがのんびりお散歩をしていると、ムサシが飛んできました。

ムサシ「だっサイじゃん、なにしてんの」

だっサイ「天気がいいからお散歩だよ」

ムサシ「そうなんだ。

    まあ、だっサイのところ何もないもんな」

だっサイ「そ、そんなことないよ!

     埼玉にもいいところいっぱいあるよ!」

ムサシ「じゃあ、他の地域よりもいいところ言ってみろよ」

だっサイ「そ、それは…」

ムサシ「すぐに出てこないってことはないんだろ!」

ムサシのいじわるな言葉にたまらなくなって、だっサイくんはその場から逃げ出しました。

だっサイくんは走りました。

目にいっぱい涙をためていました。

だっサイ「埼玉にだっていいところいっぱいあるもんっ!」

だっサイくんはどこまでも走りました。

気付くとだっサイくんは鹿児島県まで来ていました。

りゅうごどん「あれ?だっサイくんじゃない。

こんにちは。遊びに来たの?」

するとそこにりゅうごどんがやってきました。

だっサイ「りゅうごどん、こんにちは

    …はあ」

りゅうごどんは、ため息をついて元気のないだっサイくんが心配になりました。

りゅうごどん「なにかあったの?」

だっサイくんは、ムサシとのやり取りをりゅうごどんに話しました。

だっサイ「鹿児島県には宇宙センターとかあってすごいよね。

     ロケットの打ち上げとかしてるんだよね。かっこいいなあ」

だっサイくんは羨ましそうにりゅうごどんを見ます。

りゅうごどん「たしかに宇宙センターでロケットの研究をしているし、ぼくもかっこいいと思うよ。

       でもだっサイくん。埼玉県にだって宇宙に関する建物あるよね。

       さいたま市の青少年宇宙科学館。

ぼくは、あそこのプラネタリウムもいいなって思ったよ」

だっサイ「そうかなぁ?」

りゅうごどん「そうだよ!埼玉県にもいいところあるよ」

だっサイ「へへっ、そうかな」

だっサイくんはすこし照れくさそうに笑いました。

りゅうごどん「だっサイくん、もう帰っちゃうの?」

だっサイ「うん。りゅうごどんが埼玉県のいいところ教えてくれたから、もっとないか考えてみるんだ」

りゅうごどん「そうなんだ。うまくいくといいね」

だっサイ「りゅうごどん、ありがとう。また今度遊びに来るね」

りゅうごどん「いつでもおいでよ。待ってるね」

だっサイくんは埼玉県のいい所を考えながら鹿児島県を出ました。

気付くと、だっサイくんは島根県まで来ていました。

ひも根「あら、だっサイくんじゃない。こんにちは。

どうしたの?考え事?」

そこにひも根が声をかけてきました。

だっサイ「あ、ひも根ちゃん。こんにちは」

だっサイくんは埼玉県のいいところを探していることをひも根に話しました。

ひも根「そっかあ。埼玉県のいい所ねえ」

だっサイ「島根県には11月頃に神様が集まるっていう出雲大社があるよね。すごいなあ」

ひも根「ありがとう。でも、それなら埼玉県の川越市に川越氷川神社があるじゃない。

    わたしも今度行こうと思ったのよ。川越氷川神社の縁むすび風鈴。

    さっきゅんがきれいだったって言ってたの」

だっサイ「そうかな。

でもね、縁むすび風鈴はとってもきれいなんだ。

今度来たときに案内してあげるね」

だっサイくんは埼玉県のいいところを教えてもらって嬉しくなりました。

ひも根「ありがとう。その時はよろしくお願いするわね」

だっサイ「うん、わかった!」

そしてだっサイくんは島根県をあとにしました。

海を渡って今度は香川県にきました。

すると、うしみんが前からやってきました。

だっサイ「うしみん、こんにちは」

うしみん「こんにちはだっサイくん」

だっサイくんはうしみんに埼玉県のいいところを探していることを話しました。

うしみん「そっかあ、埼玉県のいいところかあ」

だっサイ「そういえば、香川県の紫雲出山は春になると桜がきれいなんだよね。いいね」

うしみん「そうだよ。天気がいいとね、とってもきれいなんだよ。

     そうだ、埼玉県にも幸手権現堂堤ってところの桜がきれいだって話を聞いたよ」

だっサイ「幸手市にあるところだね。春はとってもきれいなんだ。

     でもね、幸手権現堂堤はね、夏もすごいんだ。

     梅雨の時期にはアジサイがきれいで、権現堂公園では幸手あじさいまつりもやってるんだよ」

だっサイくんは新しい埼玉県のいいところに気付けて嬉しそうです。

うしみん「それならね、紫雲出山もあじさいが咲くんだよ。とってもきれいなんだ。

     今度見に来なよ。ぼくも埼玉県に行ってみるから」

だっサイ「そうだね。また遊びに来るね」

だっサイくんはうしみんに埼玉県のいいところを伝えられてとても嬉しそうです。

鼻歌を歌いながら香川県をあとにしました。

だっサイくんが鼻歌を歌いながら歩いていると、なしげんちゃんとサイレントフィッシュちゃんに出会いました。

なしげん「だっサイくん、こんにちは。

     だっサイくんも静岡県に遊びに来たの?」

だっサイ「なしげんちゃん、サイレントフィッシュちゃん、こんにちは」

だっサイくんは、なしげんちゃんとサイレントフィッシュちゃんにも、埼玉県のいいところ探しの話をしました。

なしげん「埼玉県のいいところ探しねえ」

だっサイ「静岡県には富士サファリパークがあるし、山梨県には富士急ハイランドとかあるよね。動物に会えたり遊べたりしていいよね」

サイレントフィッシュ「…」

なしげん「でも、埼玉県にも東武動物公園があるじゃないってサイレントフィッシュちゃんが言ってるわよ。

     あそこは一か所で動物園と遊園地が一緒になってていいよね」

だっサイ「そっか。動物園と遊園地が一緒なのもいいよね。

教えてくれてありがとう。

     今度また静岡県にも山梨県にも遊びに来るね」

なしげん「いつでもおいで。

     今度サイレントフィッシュちゃんと二人で遊びに行くね」

だっサイくんは埼玉県のいいところにいっぱい気が付けて嬉しくなりました。

これでムサシにも埼玉県のいいところを教えられるからです。

だっサイくんは静岡県を出て、東京都に向かいました。

だっサイくんがムサシを探していると、意地悪な顔をしたムサシが空から飛んできました。

ムサシ「だっサイ。また来たのか」

だっサイくんは足に力を込めてムサシに向かいました。

だっサイ「今度はちゃんと、埼玉県のいいところいっぱい言えるようになったんだよ!」

そして、だっサイくんは今まで皆に教えてもらった埼玉県のいいところをムサシに話しました。

ムサシは、だっサイくんの話を静かに聞いていました。

だっサイ「ど、どうだい。埼玉県にもいいところはいっぱいあるよ」

だっサイくんが話し終わると、ムサシはまた意地悪な顔をしました。

ムサシ「それなら東京にだってあるぜ。

    東京ドームシティには宇宙ミュージアムTENQがあるし、明治神宮だってある。目黒区の桜並木だってきれいだし、上野動物園もある。

    埼玉県に行かなくたって東京都でなんだってできるんだよ」

だっサイくんはまた何も言い返すことができません。

居てもたってもいられなくなって、だっサイくんはまた走りだしてしまいました。

だっサイくんは涙をこぼしながらも走りました。

群馬県のグンバードちゃんがだっサイくんに気付いて飛んできました。

グンバード「だっサイくん!どうしたの!」

しかし、だっサイくんにはグンバードちゃんの声は届きません。

だっサイくんはそのまま走り去ってしまいました。

後半に続く

「だっサイくんと埼玉県のいいところ」

((後半))

だっサイくんは走って走って、気が付くと青森県まで来ていました。

すると、りゅうせいとりゅうしん、ハムミ、おってぃー、みやカイ、マウンテンベアーー、白兎隊、ノースマンタがやってきました。

ハムミ「だっサイくん、こんにちは!どうしたの?」

りゅうしん「泣いてるの?なにかあったの?」

みんな、だっサイくんのことを心配していました。

だっサイくんは今日あったことをみんなに話しました。

白兎隊「自分の県のいいところかあ。自分だとあまりわかんないよね」

マウンテンベアー「そうだね、他のこに教えてもらって気付くこともあるよね」

だっサイ「そうなのかあ、難しいなあ」

みんなでうんうん唸っていると、ノースマンタが言いました。

ノースマンタ「北海道はね、冬の雪まつりで作られる雪像がすごいし、定山渓の雪灯路がきれいかな」

それに釣られるようにしてりゅうしんが言います。

りゅうしん「あ!それならね、青森県は青森冬まつりがすごいんだよ!雪の大きな滑り台があるんだ!」

ハムミ「秋田県なら田沢湖高原雪まつりとか、横手のかまくらまつりかなあ。

    なまはげも有名かな」

おってぃー「岩手県ならやまがた雪フェスティバルもいいよ」

みやカイ「宮城県にもかまくらまつりはあるし、牛タンもおいしいから、今度食べに来なよ」

白兎隊「福島県なら雪と火のまつりがあるよ。あとは喜多方ラーメンもおいしいかな」

みんな、自分のところのいいところを言っていくのを見て、だっサイくんは羨ましくなりました。

だっサイ「みんなすごいなあ。次から次へといっぱいいいところが言えて」

だっサイくんはふと、気になったことを聞いてみました。

だっサイ「みんなは他の地域といいところが同じなの、気にならないの?」

りゅうせい「気にならないわよ。だって、全く同じところなんてないじゃない。

      みんな似ているところがあって、ちょっとずつ違うの。でもそれがその場所とかお祭りの特徴で、少しずつ違うから楽しいのよ」

ハムミ「わたしもね、秋田県の雪まつりはもちろん行くけど、北海道の雪まつりも楽しくて好きよ」

だっサイくんは驚きました。

他の地域と似てても何も恥ずかしくないことに気付いたからです。

みやカイ「埼玉県にだってあるじゃない。秩父三大氷柱。自然にできた氷がとってもきれいだったよ」

だっサイ「そうなんだ。自然ってすごいよね、また今度見に来てよ」

だっサイくんは自信が溢れてきました。

他の地域と同じいいところがあってもいいことに気付いたからです。

そして、みんなが埼玉県のいいところを知っていることがとても嬉しくなりました。

だっサイ「今度こそ、ムサシに埼玉県のいいところを伝えるんだ。

     埼玉県にしかないところもちゃんと教えるんだ。

     ありがとうみんな。今度埼玉県にも遊びに来てね」

そしてだっサイくんは東京都に向かって歩き出しました。

東京都に着くと、関東地方の仲間たちがだっサイくんに駆け寄ってきました。

みんなだっサイくんのことを心配していたようです。

ムサシは少し遠くでその様子を見ていました。

だっサイくん「ねえ、聞いて。ぼくね、話したいことがいっぱいあるんだ」

だっサイくんは今日あった出来事をみんなに話しました。

グンバード「私も埼玉県のいいところいっぱい知ってるよ」

ラクナ「それならわたしも知っているわ」

みんなは口々に埼玉県のいいところを挙げていきました。

だっサイくんは、みんなが埼玉県のいいところをいっぱい知っていることを知りました。

だっサイくんはとてもとても嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

とちろう「ムサシ、これでも埼玉県のいいところはないなんて言うのかい?」

ムサシは、バツの悪そうな顔をしました。

ムサシ「埼玉県にいいところがないなんて言って悪かったよ。

    だっサイが自信なさそうだからからかってやったんだよ」

だっサイ「ムサシ。ぼくね、埼玉県のいいところいっぱい言えるよ。

     他の所と違う、埼玉県だからいいところもわかってるよ。

     もうね、自信がなさそうなんて言わせないんだからね!」

だっサイくんはそう言って、にっこりと笑って見せました。

おいまい

 

⭐️だっサイくん 短編小説 2話

だっサイくんと賢者の石

登場キャラ なしげんちゃん (山梨県) イバラキ犬(茨城県)

ある日のことです。

三賢人の一人のなしげちゃんが賢者の石の話をしてくれました。

なしげんちゃん

「賢者の石を手に入れるとどんな人でも頭が良くなる。

でも北の方角にあることを以外、今は何処にあるか誰も知らないのょね。。」

だっサイくん 「北の方?」

イバラキ犬「今はねぇんだべ?どこにあるか誰もしんねぇんだったらわかんねぇべ。」

だっさい君「興味はあるけどね。他は何か情報ないの?」

なしげんちゃん「うーん。。見つける手段が唯一、紫の納豆と同じ匂いがするそうだけど」

イバラキ犬「!!  紫の納豆知ってる!昔うちのばぁさんに食わせてもらった事があるっぺょ」

イバラキ犬「いっぺん嗅いだら忘れらんね!あの匂いは覚えてるだょ!」

イバラキ犬は気が早く物事を余り考えずにすぐ行動してしまいます。

今回も、いてもたってもいられなくなりだっサイくんに「今すぐ賢者の石を探しにイクベ」と言いました。

嗅覚の良いイバラキ犬と協力して賢者の石を探しに北に向かって出かけました。

すると細くて高い山が見えてきました。

周りは断崖絶壁で一本だけ険しい道があります。

だっサイくんとイバラキ犬は一生懸命登って行きました。

それこそ蕀の道。。

だっサイくん「こわいな〜落ちたら大変だよ」

イバラキ犬「ゆっくり行けば大丈夫だべ」と言いながらも

どんどん一本道を登って行きました。

険しく長い道のり。

でも二人ならへっちゃらです。

励ましあって登っているとやっと山頂が見えてきました。

すると

今までイバラキ犬にしか臭わなかった紫の納豆の臭いがだっサイくんにもハッキリと臭ってくるではありませんか!

その匂いに導かれる様に歩みを進めていくと、

ぱっと視界が開けました。

山頂に到着です。

だっサイくんイバラキ犬

「臭い‼️」

山頂は物凄い悪臭を放っていました。

臭い匂いを我慢して回りを見渡すと一ヶ所だけ紫鳳の光をはなっている場所があります。

イバラギ犬「だ・だっさい君?あれ、もしかして、、」

だっさい君「賢者の石?」

おそるおそる近ずくと、二人を待っていたかの様に石はまばゆきはじめました。

だっさい君は、その光と、悪臭の中、優しく優しく

賢者の石を掴みました。

するとどうでしょう。

不思議な事にさっきまで鼻をついていた臭いが全くなくなったのです。

二人はなしげんちゃんの話を思い出しました。

(賢者の石は上に向かって投げ続けると光り、どんどん上に投げた人の頭を良くする事が出来るのです)

イバラキ犬「だっサイくん先に賢者の石を上に投げていかんべか?」

だっサイくん「うん。いいよ」

イバラキ犬は元々みんなより頭が悪いので何度も何度も上に投げました。

するとどうでしょうイバラキ犬の顔つきがどんどんキリッとなり頭が良くなったように思えました。

イバラキ犬「よーしもっと高くだ」

気の早いイバラキ犬は賢者の石をくわえて思いっきり空高く上げました。

力いっぱい賢者の石を

あげたため上にも飛んだけど真っ直ぐ飛んでいきました。

先には崖があり二度と賢者の石を手に入れる事ははできなくなりました。

イバラキ犬は言いました。

「えっへん

賢若の石も僕の頭の悪さには勝てなかったね~」と高々に笑いました。

おしまい

 

だっサイくん短編小説 3話

 登場キャラ:なめやん グンバードちゃん(群馬)ムサシ(東京都) イバラキ犬 (茨城県) トチロウ(栃木県)

⭐️<だっサイくんと願いの木>

ある日だっサイくんがてくてく歩いているとグンバートちゃんがやってきました。

「ねぇねぇだっサイくん、聞いた?」

グンバードちゃんはだっサイくんに耳うちするように話しかけました。

「なぁに?」

だっサイくんがそう聞くと、グンバードちゃんはヒソヒソばなしをするようにだっサイくんに教えてくれました。

「遠い遠い南の島にね、願いの木っていうのがあるんだって」

「その願いの木に願い事をすれば、何でも叶えてくれるんだって」

グンバードちゃんは興奮してそう続けました。

「えっ!?そうなの?すごいや!」

だっサイくんはビックリしました。そんな夢みたいな木があったら、どんなにステキでしょう。

「だっサイくんは、もしも願いの木にお願いごとをするなら、どんな事を願うの?」

グンバードちゃんがだっサイくんに聞きました。

「そうだなぁ・・・ぼくは、深谷ネギをお腹いっぱい食べたいなぁ」

「もうっ!だっサイくんってば、いつも深谷ネギのことばかり考えてるんだから!」

グンバードちゃんはあきれ顔です。

「グンバードちゃんは何をお願いするの?」

だっサイくんがそう聞いて、グンバードちゃんが口を開いたその時でした。

「なんだって?願いの木?なんかおもしろそうな話してんな」

ムサシがやってきました。

ムサシはだっサイくんのことをいじめる悪いやつです。グンバードちゃんも、いつもいばっているムサシがきらいでした。

「べつに、あんたには関係ないでしょ。それにこの話は本当かどうか分からないんだから」

グンバードちゃんは怒ったようにそう言いました。

「ちぇっ。話に入れてくれたっていいだろ」

ムサシはつまらなそうです。

「じゃあムサシくんは、願いの木に何をお願いしたいの?」

だっサイくんがムサシにそう聞くと、ムサシは胸をはって

「オレか?オレの願いは決まってる!世界征服だ!!」

と自信満々で答えました。

グンバードちゃんはあきれ顔です。

「しっかし、願いの木ったって、本当は無いんだろ。つまんねーよな」

ムサシはそう言って小石をけりました。

「あいたっ!」

ムサシが蹴った小石が誰かの頭にあたってしまったようです。

「あっ、イバラキ犬だ!だいじょうぶ?」

だっサイくんが心配して声をかけました。

「うん、平気だよ。だっサイくん、グンバードちゃん、こんにちは。あれ、ムサシもいるの?」

「ムサシが蹴ったのよ、その小石」

グンバードちゃんが言いつけました。

「ちっ。お前がそこに突っ立ってたのがいけねーんだよ」

ムサシは謝りもしないで不機嫌そうにしています。

「みんな、なんの話をしていたの?」

イバラキ犬が聞いてきたので、願いの木について話していたと教えると、

「本当にあるのかどうか、とちろうさんなら知ってるんじゃないかなぁ」

と言ったので、みんなでとちろうのところへ行くことにしました。

「とちろうさーん!」

呼びかけると木の穴からとちろうが顔を出しました。

眠そうな顔をしています。

「どうした?こんな時間に」

「あのね、とちろうさんって願いの木って知ってる?」

だっサイくんはとちろうに尋ねました。

「願いの木?あの南の島にあるっていう、伝説の?」

「知ってるんだね!」

イバラキ犬が嬉しそうな顔をしました。

「まぁ、伝説だがね。でも確かに存在すると聞いたことはあるよ」

とちろうはそう答えました。

「南の島・・・だよね。本当にあるなら、探しに行ってみようかな」

グンバードちゃんがそう呟いたのを聞いて、とちろうは巣の中に戻り、古い地図を持ってきました。

「ここにこんな地図がある。この地図がしめす、この島が、願いの木があると言われている南の島だよ。もし、本当に探すのなら、この地図を持っていきなさい」

グンバードちゃんに地図を渡し、とちろうは

「気を付けて行くんだよ」

と言って巣の中へ戻っていきました。

「わー!すごい!まるで宝の地図みたいだね!」

だっサイくんは目をキラキラかがやかせて地図をのぞきこみました。

「ねぇ、だっサイくん、願いの木、探しに行かない?」

グンバードちゃんは、だっサイくんを誘いました。

「行く行く!」

だっサイくんはノリノリです。

「俺も行くぞ!」

ムサシもノリノリです。

「え!?だってムサシの願いって世界征服でしょ?そんなの実現したら大変じゃない」

グンバードちゃんは嫌な顔をしましたが、ムサシはおかまいなしです。

「僕もついてっていい?」

イバラキ犬もワクワクしたような顔でそう聞いてきたので、4匹は願いの木を探しに南の島へ向けて出発しました。

4匹は南へ向かってどんどん歩いていきました。

途中、色々な仲間たちに出会って、南の島の願いの木について聞いてみましたが、みんな「知らない」と言いました。

「う~ん・・・南の島と願いの木・・・本当にあるのかなぁ・・・」

だっサイくんはだんだん不安になってきました。

「ところで、グンバードちゃんとイバラキ犬は願いの木に何を願うの?」

ふと、まだ聞いていなかったな、と思ってだっサイくんは2匹に聞きました。

「私は世界中の空を飛んで旅行したい!」

グンバードちゃんはそう言うとパタパタと羽を軽やかに羽ばたかせました。

「ぼくは・・・」

イバラキ犬はすぐに答えずにしばらく考えていました。

「なんだよ、お前、何にも思いつかないのかよ」

ムサシがイバラキ犬を急かします。

「う~ん・・・そうだなぁ・・・ぼくは、特に、なんにもないや」

イバラキ犬はそう言いました。

「ぼく、今の自分でまんぞくしてるし、毎日楽しいから、願いの木にお願いする事って何にも思いつかないな」

その言葉を聞いて、だっサイくんもグンバードちゃんも不思議に思いました。

「願いが無いのに願いの木のところへ行くなんて、変だよ」

イバラキ犬はそんな事は気にしていないようでした。

「だって、願いの木ってきっとすごくステキな木だと思うんだ。だってみんなの願い事を叶えてくれるんだろ。そうだ!僕は、みんなが無事に願いの木にたどり着いて、願い事を叶えてもらえるようにお願いするよ!」

グンバードちゃんはあきれ顔です。

「それじゃあ、意味ないじゃない・・・」

4匹はそれからもどんどん南に向かって歩いていきましたが、いつまでたっても南の島にはたどり着けません。

日が暮れて夜になってしまったので、その日は大きな木の下で眠る事にしました。

その晩、だっサイくんは夢を見ました。

願いの木の夢でした。

願いの木は、大きな木で、美味しそうな果物がたくさん実っていました。

「この木に願い事をすれば、願いが叶うんだね」

だっサイくんは嬉しそうに、願い事を言いました。

「深谷ネギをお腹いっぱい食べたいです!」

すると、どうでしょう、木から深谷ネギが次々に湧き出てきたのです。

最初はとても嬉しくて、出てくる深谷ネギをパクパク食べていただっサイくんでしたが、そのうちに飽きてきました。他のものも食べたいなぁと思ったのです。

でも、まだお腹いっぱいではなかったので、願いの木は深谷ネギを出すのをやめません。

次々に出てくる深谷ネギに、だっサイくんは埋もれてしまいました。

「く・・・くるしぃ~」

「・・・サイくん・・・!だっサイくん!!」

グンバードちゃんに自分の名前を呼ばれてだっサイくんはハッと目を覚ましました。

「どうしたの?なんだかうなされていたみたいだけど・・・」

グンバードちゃんは心配そうです。

「う~ん・・・なんでもないや。グンバードちゃん、ぼく、やっぱり願いの木にお願いするのやめようかな・・・」

だっサイくんは、そう言いました。

すると、グンバードちゃんは

「もしかして、願いの木の夢を見たの?」

と聞きました。

「うん、深谷ネギに押しつぶされちゃったよ」

だっサイくんがそう答えると、グンバードちゃんは

「実は私も願いの木の夢を見たの・・・。それでね、世界中の空を飛んでいるうちにどんどん歳をとってしまって、すごく怖かったの・・・」

と言いました。

「うわあぁぁ!やめろおぉぉ!!」

突然、眠っていたはずのムサシがそう叫び、飛び起きました。

「はぁ・・・はぁ・・・夢か・・・」

我に返ったムサシは

「おい!俺は帰る!」

と言い出しました。

ムサシも、願いの木の夢を見たのでしょうか。

だっサイくんやグンバードちゃんがいくら聞いても答えてくれませんでしたが、きっと嫌な夢だったに違いありません。

4匹は引き返してうちへ帰る事にしました。

帰った後、とちろうに地図を返しに行くと、とちろうは

「で、願いの木は見つかったかい?」

と聞きました。

だっサイくん、グンバードちゃん、ムサシは、ちらっとイバラキ犬を見てから、口々に

「う~ん、なんかね、僕たちは、今の自分で十分幸せだって分かったんだ」

「そうそう、途中で気が付いたの」

「それで引き返してきたってわけさ」

と答えました。

とちろうはまんぞくそうに笑います。

「ふぉっふぉっふぉ!けっこうけっこう!それが一番じゃ!今に満足して、幸せを感じられる、最高じゃな!」

イバラキ犬は

「でもとっても楽しい旅だったよ」

とニコニコ笑顔でごきげんでした。

だっサイくんとグンバードちゃんは、とちろうに地図を返した後の帰り道で

「イバラキ犬ってすごいよね」

という話をしました。

願いの木がもしあったら、あなたは探しに行きますか?

もし見つけたら、何をお願いしますか?

おしまい

 

 

だっサイくん 短編小説 4話

⭐️<好きって気持ちと苦手な気持ち>

登場キャラ:ハピピー福井県、りゅうせいとりゅうしん 青森県、ラクナ 神奈川県、みみんちゅら 沖縄県

だっサイくんとグンバードちゃんは、今日も一緒に散歩を楽しんでいました。

お日様はニコニコ笑顔で天気はポカポカ。

ぷっかり浮かんだ雲が気持ちよさそうに青空に漂っています。

「あ~良い気持ちだねぇ」

だっサイくんはのびをしながらグンバードちゃんにそう言いました。

「散歩には最高の陽気だね」

グンバードちゃんも気持ちよさそうにそう答えました。

「あれ、あそこにいるのは、りゅうせいとりゅうしんかな?ふたりも散歩かな?」

だっサイくんが見つけたのは、恐竜の親子、りゅうせいとりゅうしんでした。

仲良さげに歩くふたりの姿を見て、だっサイくんは声をかけました。

「やあ、こんにちは」

「あっ!だっサイくんだ!」

りゅうしんが目を輝かせました。

「こんにちは」

りゅうせいは優しそうな声であいさつを返してくれました。

「ねぇねぇだっサイくん!おいかけっこしようよ!」

りゅうしんは、だっサイくんを遊びに誘いました。

「いいよ!よーし!じゃあぼくがオニだ!いくぞ~!!」

だっサイくんはそう言うと、りゅうしんの方へ走っていきました。

「りゅうしんは本当にだっサイくんが好きなんだね」

グンバードちゃんがりゅうせいにそう言うと、りゅうせいは

「前からずっと仲良しだからね。あのふたりは。りゅうしんもすっかり懐いちゃって。だっサイくんが遊び相手になってくれるから、いつも助かってるよ」

と笑いました。

楽しそうに駆け回るだっサイくんとりゅうしん。

そんな様子を羨ましそうに見つめる視線がありました。

「こんにちは!!」

ものかげからひょこっと顔を出したのは、ハピピーです。

「あら、ハピピー、こんにちは」

グンバードちゃんはハピピーを見ると明るく挨拶を返しました。

「あ、ああ、ハ・・・ハピピー。こんにちは」

りゅうせいも挨拶を返しましたが、どこか困ったような表情を浮かべています。

できれば今すぐにここから立ち去りたい、という表情でした。

「私もあのおいかけっこ、混ぜてもらいたいな」

ハピピーはそう言うと、だっサイくんとりゅうしんの元へ駆け寄っていきました。

「あっ・・・!」

りゅうせいはそれを止めようとしたようでしたが、ハピピーはお構いなしです。

「ねぇねぇ、私もおいかけっこ、まーぜーて!!」

ハピピーはふたりに声をかけました。

「もっちろん!!」

そう言うだっサイくんに対して、りゅうしんはハピピーの姿を見るとりゅうせいと同じように表情が曇りました。

「え、えーと・・・うーんと・・・」

りゅうしんはそう言いながら、助けを求めるようにりゅうせいの方を見ました。

そして、りゅうせいの方へと駆けていって

「ぼくはいいや。だっサイくんとハピピーちゃんのふたりでやったら?」

と言いました。

「え?なんで?ふたりより3人の方が楽しいよ?」

だっサイくんは不思議な顔をしました。

するとハピピーが

「えー!りゅうしんがやらないなら、いいや。ね、りゅうしん、遊ぼうよ!遊ぼう!!りゅうせいも、一緒に遊ぼう!!」

と言ってりゅうしんとりゅうせいの方へ駆けていきました。

りゅうせいは小さく溜息をついてから、だっサイくんとグンバードちゃんに

「ごめんなさい、ちょっと用事があって、行かなきゃ。じゃ、また!」

と言ってりゅうしんを連れてそそくさとその場から立ち去ってしまいました。

取り残されたハピピーは残念そうな顔です。

「あーあ、行っちゃった・・・いつもこうなのよね・・・私って嫌われてるのかな・・・」

ハピピーは落ち込んだ様子です。

「どうしたの?」

だっサイくんがそう聞くと、ハピピーは泣き出してしまいました。

「あのね、私はりゅうせいとりゅうしんが好きで、好きで、大好きなの。だから仲良くなりたくていつも一緒に遊ぼうって声をかけるんだけど、でも、いつも逃げるようにいなくなっちゃうの。これって私は嫌われてるってことかな・・・?」

だっサイくんも、グンバードちゃんも、泣いているハピピーを見て、かわいそうだな、と思いました。

そこで、りゅうせいとりゅうしんのところへ行って、本当の気持ちを聞いてみる事にしました。

「ハピピー?ああ、うん、確かにちょっと苦手なんだよね」

りゅうせいもりゅうしんも困り顔でそう話しました。

「なんていうか、僕たちの事を好きでいてくれる気持ちはすごく伝わってくるんだけど、ちょっとしつこいっていうか、いっつも一緒にいたい!なんでもかんでも同じじゃなきゃ!っていう気持ちが強すぎて、疲れちゃって・・・」

「そっか。そんな理由だったんだね」

だっサイくんは、納得しました。

でも、どうしたら良いか、だっサイくんとグンバードちゃんには分かりませんでした。

「う~ん・・・ハピピーはりゅうせいとりゅうしんが好きだけど、りゅうせいとりゅうしんはハピピーが苦手なんだよね。ぼくとしてはみんな仲良くできたら良いと思うんだけど・・・グンバードちゃん、何か良い案は無いかな」

「うーん・・・難しいよね・・・私はハピピーもちょっとしつこすぎるのが良くないと思うけど・・・」

「だっサイくんと、グンバードちゃんじゃない、こんにちは」

声をかけられて顔を上げると、ラクナとみみんちゅらが散歩していました。

「ラクナ、みみんちゅら、こんにちは」

だっサイくんとグンバードは挨拶を返しました。

「どうしたの?なんだかくら~い顔をしてるけど・・・」

ラクナが心配そうに尋ねました。

「うん、実はね・・・」

だっサイくんとグンバードちゃんは、りゅうせいりゅうしん親子とハピピーの悩みについてラクナとみみんちゅらに話しました。

「それは大変ね。でも、そんなに難しい事じゃないわよ。要するにハピピーがしつこすぎたのが良くなかったって事でしょ?そしてそれをちゃんと伝えなかったりゅうせいりゅうしん親子にも少しだけ問題があるわね。もし良ければ力になるわよ」

ラクナがそう言ってくれたので、だっサイくんとグンバードちゃんは喜びました。

そして、りゅうせいとりゅうしんを呼びに行きました。

みみんちゅらがハピピーを呼んできて、話し合いの場を作ったのです。

ラクナがハピピーの気持ちと、りゅうせいとりゅうしんの気持ちを聞きました。

ハピピーは、りゅうせいとしゅうしんが好きだけど、嫌われているかも、と不安に思って、ますますしつこくしてしまった、と言い、りゅうせいとりゅうしんは、そのしつこいところが苦手なんだ、という事を言いました。

ラクナはそれぞれの話をじっと聞いてから

「それじゃあ、どうすれば良いと思う?」

と、まずハピピーに聞きました。

「私は、しつこくしないように気を付けた方が良い・・・って事だよね?」

自信なさげにそう言うハピピーに、ラクナは笑顔で

「そういう事!」

と言いました。

「それから、りゅうせいとりゅうしんも、ハピピーの気持ちを分かってあげて。どうしてもね、好きな相手には『好き』って気持ちをぶつけたくなるのよ。それにその気持ちをぶつけても相手が受け取ってくれているって思えないと、不安になって、ついついしつこくしちゃうの。だから、ハピピーの『好き』って気持ちは受け入れてあげて」

ラクナはりゅうせい、りゅうしん親子にもそう言いました。

りゅうしんは

「分かった!じゃあこれからはハピピーちゃんとも遊ぶようにするよ!」

と答えました。

だっサイくんはそれを聞いてほっとしました。

そして

「じゃあ、今からこの前の続き、おにごっこ、やろうよ!」

と誘いました。

それから、その場にいた全員でおにごっこを楽しみました。

ハピピーも、りゅうせいも、りゅうしんも、もちろんだっサイくんもグンバードちゃんも、ラクナもみみんちゅらも、みんな笑顔でした。

おしまい

 

だっサイくん 短編小説 5話

⭐️<ふたりの力がひとつになれば>

  登場キャラ:ししのちゃん 長野県、おってぃー 岩手県、ナマケイヨ、ナマケイコ 愛知県、グンバードちゃん 群馬県

ある晴れた日の午後、だっサイくんとグンバードちゃんは公園のベンチに座ってお喋りを楽しんでいました。

と、そこにナマケイヨとナマケイコがやってきました。

まるでスローモーションを見ているような光景でしたが、ゆっくり、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきます。

ナマケイコはナマケイヨの腕に抱きかかえられています。

眠っているのか、眠そうにしているだけなのか、遠目では分かりませんでしたが、目が閉じているように見えました。

「あら、ナマケナイヨさんじゃない」

グンバードちゃんが親子に気づいて、手を振りました。

すると、ナマケナイヨも手を振り返してきたのですが、それもまたスローモーションのような動きでした。

しかし、なんだか困ったような顔をしているのに、グンバードちゃんは気づきました。

「何かあったのかな」

グンバードちゃんはパタパタと親子のところへ飛んでいきました。

「こんにちは。ナマケナイヨさん、それからナマケナイコちゃん」

「こ~ん~に~~」

「どうしたの?なんだか困っているようだけど・・・」

グンバードちゃんは、ナマケナイヨが挨拶を返す前に質問しました。

「おってぃ~が~~た~い~へ~ん~」

「おってぃーが大変?」

ナマケナイヨはゆっくりと頷きました。

「大変って何が?」

「は~ま~った~」

「はまった?どういう事?」

話すスピードの遅いナマケナイヨにグンバードちゃんはすっかり参ってしまいました。

このままでは日が暮れてしまいます。

「えーっと、とにかく、おってぃーがどこにいるのかだけ、教えて」

すると、ナマケナイヨはゆっくりと指をさして

「あ~っちぃ~」

と答えました。

「あっちね。分かった、ありがとう!」

グンバードちゃんはお礼を言って、急いでだっサイくんのところへ戻りました。

「だっサイくん、行くよ!なんかおってぃーが大変らしいの!」

「へ!?おってぃーが大変?どういう事?」

「よく分かんないけど、はまったって。とにかく行ってみましょ」

そしてグンバードちゃんとだっサイくんは、ナマケナイヨが教えてくれた方向へ走っていきました。

「うう・・・助けて・・・」

かすかに聞こえた声をだっサイくんは聞き逃しませんでした。

「この声は、おってぃーだね?おおーい!おってぃー!どこにいるんだい?」

だっサイくんが呼びかけると、古い木の小屋のようなものの中から

「ここだよー!」

とくぐもった声が聞こえてきました。

だっサイくんとグンバードちゃんが小屋の中へ入ると、大きなお尻が見えました。

「おってぃーだよね?どうしたんだい?一体全体・・・」

「その声は、だっサイくん?」

「そうだよ」

「ああ、良かった。実は、この小屋の中に美味しそうな魚の塩漬けが保管されているって聞いて、取りに来たんだけど、見ての通りドアの隙間にはさまってしまって、抜けなくなっちゃったんだ。たてつけが悪くて、少ししか開かなくて、無理やり身体をねじ込ませたのが良くなかったみたい・・・」

おってぃーは困り果てた声でそう言いました。

「今助けるよ」

だっサイくんはそう言って、おってぃーのお尻を思い切り引っ張りました。

「あいたたたたた・・・!」

苦しそうなおってぃーのうめき声を聞いて、だっサイくんは引っ張るのをやめました。

「ごめん」

そして、今度はドアを壊せないかどうか、押したり叩いたり、体当たりしたりしてみました。しかしドアはびくともしません。

「うーん・・・ぼくひとりじゃ無理かぁ・・・かといってグンバードちゃんじゃ戦力にならないし・・・」

グンバードちゃんは力が弱いので、おってぃーを引っ張ったり、ドアを壊したりする事はできません。代わりにドアの隙間から反対側にまわっておってぃーを応援していました。

だっサイくんの「ぼくひとりじゃ無理かぁ」というつぶやきを聞いて、グンバードちゃんは再びだっサイくんの方へ飛んで戻ってきて

「誰か呼びに行ってこようか?」

と提案しました。

「それが良いかも。誰が良いかな・・・うーん・・・」

考えるだっサイくんに、ドアの向こうから

「ししのちゃんは?」

というおってぃーの声がしました。

「そうだ!ししのちゃんだ!おってぃー、ありがとう!グンバードちゃん、急いでししのちゃんを呼んできてくれる?」

だっサイくんは、ある必殺技を思い出していました。

ししのちゃんとなら、上手くいくかもしれない・・・そう考えていました。

「分かった!」

グンバードちゃんはそう言うとパタパタと飛び立ちました。

「しかし、おってぃー、よくししのちゃんなんて思いついたね」

だっサイくんがそう聞くと、おってぃーは

「だって前にもふたり揃って活躍したって噂を聞いたことがあったからさ。ふたりが揃えば最強のパワーが出るって、結構有名だよ」

と言いました。

それを聞いて、だっサイくんはまんざらでもないような気分になりました。

しばらくして、足音と羽音が聞こえてきました。

「連れてきたよー!」

グンバードちゃんの声がして、ししのちゃんが現れました。

「あらー!こりゃ大変!早くどうにかしないとね」

「ししのちゃん!来てくれてありがとう!」

だっサイくんがそう言うと、ししのちゃんは

「呼ばれればいつでもどこへだって行くわよ!」

と満面の笑顔で答えてから

「おってぃー、大丈夫?すぐ助けるからね!」

とドアの向こうのおってぃーに向かって声を張り上げました。

「ありがとう!」

おってぃーも安心したようにそう答えました。

「さあ、じゃあ一発できめますか」

ししのちゃんは不敵な笑みを浮かべてだっサイくんを見ました。

「そうだね。息を合わせていこう」

そして、ふたり揃ってドアから離れて飛び込む態勢を整えました。

「いくよ~!」

「オーケー!」

「せーのっ」

「「ダブル猪突猛進アターーーーック!!!!!」」

ドドドドドッッ!!!

だっサイくんとししのちゃんの足音が小屋内に響き渡りました。

ほこりと土埃が舞い、グンバードちゃんを思わず目を閉じてむせこみました。

バアァンッ!!

メリメリメリッ!!

バタアァンッ!!

大きな音を立てて、ドアが向こう側に倒れました。

そしておってぃーがその場に倒れ込むように出てきました。

「おってぃー!大丈夫??」

グンバードちゃんが近づいて声をかけると

「大丈夫、大丈夫!いや~助かったよ、ふたりとも、ありがとう。グンバードちゃんも、ありがとう」

おってぃーはそう答えました。

「無事で良かった!」

だっサイくんとししのちゃんはハイタッチして喜びました。

その後、おってぃーは何度も何度もお礼を言って帰っていきました。

ししのちゃんとだっサイくんとグンバードちゃんは並んで歩いて帰りました。

「ししのちゃん、力を貸してくれてありがとうね」

だっサイくんがそう言うと

「困ったときはお互い様だからね」

ししのちゃんはニヤッと笑ってそう答えました。

公園まで戻ってくると、ナマケイヨとナマケイコがいたので

「おってぃーは無事助けてきたよ」

とだっサイくんが報告しました。

「あ~り~が~」

「いやいや、大丈夫。ししのちゃんにも助けてもらったしね」

ナマケイヨのお礼をさえぎって、だっサイくんはそう答えました。

「僕らのダブル猪突猛進アタックは最高だね」

「ふたりの力が合わさればどんな壁もふっとばせるからね」

ししのちゃんはまた不敵に笑って、家へ帰っていきました。

「ふたりの力がひとつになれば、って良いね」

帰り道にグンバードちゃんがうらやましそうにそう言ったので

「今回は、3人の力だったね。グンバードちゃんがししのちゃんを呼びにいってくれたから、おってぃーを助けられたんだよ。ありがとう」

だっサイくんは、グンバードちゃんにも満面の笑顔でお礼を言いました。

おしまい

 

 

だっサイくん 短編小説 6話

⭐️<だっサイくんと三賢人>

登場キャラ:なしんげんちゃん 山梨県、サイレントフィッシュ 静岡県、とちろう 栃木県、かめい、かめりん 三重県

「ねぇねぇグンバードちゃん、日本ってさ、世界的に見ても自分が幸せだと思っている人が少ないんでしょ?」

ある日、だっサイくんはグンバードちゃんにそんな事を言いました。

「どうしたの?突然」

グンバードちゃんは驚いて聞き返しました。

「いや~、この前さ、願いの木を探しに行くとか、そういう話になった事があったじゃない。その時、イバラキ犬が何も願う事はなくて今が一番幸せだ、みたいな事言ってたでしょ?」

確かにそんな事がありました。

グンバードちゃんが噂を聞いた「願いの木」という、何でも願い事をひとつ叶えてくれるという木を探しに行こうとした時に、イバラキ犬が「今の自分で満足してるし、毎日楽しいから、願いの木にお願いする事って何にも思いつかないな」と言い出したのです。

「そんな事もあったねぇ」

グンバードちゃんは懐かしそうな顔をしました。

「それでさ、その後たまたまテレビで見たときに、日本人には自分が幸せだって思っている人が少ないって言ってて、それで気になってね」

「ふ~ん。それで?」

「それで、ぼく、思ったんだけど、幸せって何だろう、って」

「また随分難しい事を言い出したね・・・」

グンバードちゃんは少しめんどくさそうに言いました。

「そういう事は、とちろうとか、三賢人に聞いてみるのが良いんじゃない?」

「三賢人?」

「知らないの?とちろうと、それからなしんげんちゃん、あと、かめいとかめりん親子だよ。みんなとても頭が良くて、色んなことを知ってるから、幸せについても教えてくれるんじゃないかな」

グンバードちゃんに三賢人の話を聞いただっサイくんは、早速三賢人に、幸せについて聞いてみる事にしました。

まずはとちろうです。

「とちろうさーん、ねぇ、幸せってなぁに?」

木の枝にとまっているとちろうに、そう投げかけてみると、とちろうは少し考えてから

「それは難しい質問のようで、実は簡単な質問だ。お前たち、この前の願いの木で幸せについてはもう見つけているだろうに。今の生活、今の人生に満足する事だよ。多くを望みすぎず、今あるもので満足する事、これこそが幸せだ」

と答えました。

「今に満足すること、か。ありがとう、とちろうさん!」

次にだっサイくんとグンバードちゃんは、なしんげんちゃんの元へ行きました。

「なしんげんちゃん、幸せってなぁあに?」

「・・・・・・」

「ねぇ、聞いてる?幸せって何だと思う?」

「・・・・・・」

「考えてるのかな・・・」

なしんげんちゃんが何も答えてくれないので、不思議に思っていると、背後から声がしました。

「それはサイレントフィッシュよ。なしんげんは私。サイレントフィッシュもサイレントフィッシュなりに幸せについて思うところはあるみたいだけど、教えてあげましょうか」

「サイレントフィッシュが何を考えているのか、分かるの?」

グンバードちゃんがそう聞くと

「私は三賢人よ。このくらい、朝飯前!」

なしんげんちゃんはそう言って、サイレントフィッシュの考えを教えてくれました。

「サイレントフィッシュの考えでは、幸せとは、自分らしくある事。自分は言葉を全く発しないけれど、私が通訳してくれるし、自分らしく生きられてとても幸せ、だって。ふふっ嬉しい事を言ってくれるわね。でも、確かにサイレントフィッシュの考えの通りかも。自分らしく生きる事、自分の得意なところを生かして、苦手なところは誰かにフォローしてもらって生きられたら、それは幸せよね」

「自分らしく生きる、か。なしんげんちゃん、サイレントフィッシュ、ありがとう」

そしてだっサイくんとグンバードちゃんは、かめい、かめりん親子の元へ行きました。

「かめいさん、かめりん、ねぇ、幸せってなぁに?」

かめりんはすぐに

「美味しいご飯をお腹いっぱい食べる事!」

と答えました。

「あはは、僕と同じだ!僕も大好きな深谷ねぎをお腹いっぱい食べられたら幸せだなって思うよ!」

だっサイくんは嬉しくなりました。

かめいは少し考えてから「幸せねぇ・・・。幸せって、これが幸せっていうものは無いのよ」と答えました。

「どういうこと?」

だっサイくんとグンバードちゃんが聞くと、かめいは

「今、かめりんとだっサイくんは、美味しいご飯や、自分が大好きなものをお腹いっぱい食べる事が幸せだって言ったでしょう?それもひとつの答え。その人にとっての『幸せ』なの。でも世の中には『三度の飯より〇〇が好き』っていう人もいるでしょう?その人たちにとっては、大好きなものをする事が美味しいご飯を食べる事よりも幸せなの。これはつまり、幸せって人によって違うって事なのよ」

「幸せは人それぞれってこと?」

グンバードちゃんがそう聞くと、かめいは

「そういうこと」

と返しました。

「それから、もうひとつ、大切な事は、幸せは『自分が幸せと思った事が幸せ』って事よ」

だっサイくんもグンバードちゃんも、ピンと来ないような表情をしてしまいました。

「例えば、大金持ちな人って幸せだと思う?」

かめいがそう尋ねました。

「思う!だってお金があれば何でも好きな事ができるし、買いたいものを買えるもんね」

グンバードちゃんがそう答えました。

「ふつうはそうよね。でも、じゃあ、その大金持ちな人が、自分が好きじゃない仕事をして大金持ちになって、自分の夢を諦めた人だったとしたら?」

「あ・・・そっか・・・そしたら、その人はあんまり幸せとは言えないのかも?」

今度はだっサイくんが答えました。

「でも、夢は諦めたけれど、大切な家族に恵まれて、笑いの絶えない毎日を送っていたら?」

かめいの問いかけに、だっサイくんもグンバードちゃんも混乱してきました。

「ああもうっ!分かんなくなってきたよ!!」

そこに、かめりんがひと言

「それはその人が自分が幸せだと思ったら幸せなんじゃないの?」

と言いました。

「そういう事!他人から見て、その人が幸せかどうかなんて分からないのよ。大事なのは、自分が幸せだと感じているかどうかってこと」

かめりんの鋭い答えに

「さすが三賢人・・・」

と、だっサイくんとグンバードちゃんは感心しました。

「かめいさん、かめりん、ありがとう」

そう言って、だっサイくんとグンバードちゃんは帰途につきました。

「結局幸せって、今に満足する事とか、自分らしく生きる事とか、自分が幸せだと思えるかどうかとか、そんなかんじだったね」

「なんだかつかみどころのない答えしかもらえなかったけど・・・でも、なんとなく分かるような気もする・・・」

グンバードちゃんは、そう言いました。

「え?グンバードちゃんは、分かったの?」

「うん、私にとっての幸せは、こうしてだっサイくんみたいな気の合う友達と毎日楽しく暮らせている事。それから好きなとこへ飛んでいける事。これだけで十分ってこと」

「へぇ~。じゃあぼくだって、毎日美味しい深谷ねぎを食べて、グンバードちゃんとお喋りしたり散歩したりできたら、もうそれだけで幸せだってことだな」

気づいたらふたりはいつもよりもニコニコな笑顔を浮かべていました。

自分の幸せに気付ける事、これが一番の幸せなのかもしれませんね。

おしまい

 

 

だっサイくん 短編小説 7話

⭐️<迷子の涙をふっとばせ!>

 登場キャラ:ニイガルー、コガルー 新潟県、ひめっちょ 兵庫県、ノースマンタ 北海道、 高知県

 クロシオダイル

ある日、だっサイくんとグンバードちゃんが散歩していると、どこからか泣き声が聞こえてきました。

「え~ん、え~ん・・・」

「誰だろう?どうしたのかな?」

だっサイくんが心配そうにグンバードちゃんに話しかけました。

「この声は・・・ニイガルーのところのコガルーじゃない?」

グンバードちゃんはそう言うと、泣き声がした方に飛んでいきました。

「やっぱりコガルーだわ。どうしたの?迷子になっちゃったの?」

コガルーは、グンバードちゃんの方を向いて、泣きながら

「うん、迷子になっちゃった」

と答えました。

そしてまた

「こわいよ~」

と言いながら泣き出してしまいました。

お父さんやお母さんがどこにいるか、いくら聞いても分かりません。

おうちがどこにあるかも知らないだっサイくんとグンバードちゃんは、すっかり困り果ててしまいました。

「とにかく、お父さんとお母さんが見つかるまでは私たちが一緒にいるから、怖くないよ」

グンバードちゃんはそう言ってどうにか泣き止ませそうとしましたが、コガルーはなかなか泣き止みません。

だっサイくんも、いないいないばぁをしたり、高い高いをしようとしたり、色々試してみましたが、うまくいきません。

「う~ん、じゃあ一緒にお父さんとお母さんを探しに行こうか」

だっサイくんはコガルーをあやすのを諦めて、コガルーを連れてグンバードちゃんと一緒にコガルーの家族を探しに出かけました。

コガルーはまだ泣いています。

「あれ、どうしたの」

「あ!ひめっちょ!やぁ!」

両親探しの道中で、ひめっちょと出くわしただっサイくんたち。

「この子、迷子になっちゃったんだって。それで今両親を探してるんだけど・・・あっ!!そうだ!ひめっちょ!君って確かワープ能力を持ってるよね?コガルーの両親のところか、コガルーの家まで飛ばす事ってできないの?」

だっサイくんがひめっちょに相談しましたが、ひめっちょは困り顔です。

「う~ん・・・困ったわねぇ・・・私のワープ能力は、知っている場所にしか使えないのよ。私はこの子の家を知らないし、この子のご家族がどこにいるかも知らないから、ダメね」

「そうか・・・ありがとう。じゃあもうちょっと探してみるよ」

だっサイくんはしょんぼりとうつむき、そう呟きました。

その姿を見たひめっちょはいてもたってもいられなくなり、

「待って。私も一緒についていくわ。もし何か手がかりが見つかれば役に立てるかもしれないし」

そしてひめっちょも加わってコガルーの家族探しが再開しました。

コガルーは泣き止んだものの、元気が全くなく、不安そうで寂しそうな表情を浮かべています。元気もなく、だっサイくんもグンバードちゃんも、そしてひめっちょも心配でした。

「やぁ、みんな、どうしたんだい?なんだか元気がないみたいだけど」

そんな中、ノースマンタが声をかけてきました。

「ああ、ノースマンタさん、こんにちは。実は、コガルーが迷子になっちゃって、今家族を探しているんだけど、この通り、コガルーが全然元気じゃなくて、ぼくたちも心配してるんだ」

だっサイくんがそう説明すると、ノースマンタは

「そうかい、それはかわいそうに。じゃあおじさんが特別な遊びを教えてあげようか」

と言い出しました。

「特別な遊び?」

グンバードちゃんが聞き返すと、ノースマンタはにやりと笑って

「そーうれっ!」

と身体に力を入れました。

すると、なんとノースマンタの身体に迷路が浮かび上がってきたのです。

「わぁお・・・!!」

これにはみんなびっくりしました。

コガルーも目を真ん丸にして驚いています。

「おじさんの迷路で遊んでいくと良いよ。いくらでも新しい迷路を作れるからね」

その言葉で、コガルーの目が輝きました。

「やる!」

そしてコガルーは夢中になって迷路で遊び始めました。

「良かった」

コガルーに笑顔が戻ったのを見て、だっサイくんたちはほっとしました。

「本当に楽しそう。じゃあ、私もちょっとお手伝いしようかしら」

そう言うと、今度はひめっちょがノースマンタの迷路にワープ機能を付け加えました。

「すっげぇ!ワープだ!!」

コガルーは大はしゃぎです。

こうして、家族探しはひと休みして、コガルーはノースマンタとひめっちょのおかげで楽しいひと時を過ごす事ができました。

途中でクロシオダイルが通りかかって

「何やら楽しそうだな」

と声をかけてきたので、だっサイくんとグンバードちゃんが事情を説明すると、クロシオダイルも

「そういう事なら、俺も手を貸すぜ」

と言って、わにわにパニックで遊ばせてくれました。

コガルーは、ワープ機能つきの迷路と、わにわにパニックに夢中で、キャッキャと楽しい声をあげています。

「良かったね」

グンバードちゃんはだっサイくんにそう話しかけました。

「うん、みんながコガルーのために色々力を貸してくれて、本当に助かったよ」

「コガルーにも笑顔が戻ったしね」

「そうだね」

「で、どうするの?家族が全然見つからないけど・・・」

と、その時でした。

「お~い!」

という声がして振り返ると、ニイガルーがぴょんぴょん飛び跳ねてこちらにやってきます。

「あの!!うちの息子を!!見ませんでした?」

息をきらしてそう聞いてきたニイガルーに、だっサイくんはにっこりと微笑みかけて

「コガルーなら、あそこにいますよ」

と指さした。

「迷子になって泣いていたのを、僕とグンバードちゃんが見つけて、ご家族を探していたんですが、なかなか見つからなくて・・・。コガルーがどんどん元気をなくしていったので、今みんなに力をもらってコガルーを元気づけているところなんです」

だっサイくんの説明を聞いて、ニイガルーはほっとしたような表情を見せてから、ヘナヘナとその場に座りこみました。

「良かった・・・!」

そしてだっサイくんの方を向いて

「ありがとうございます」

と言いました。

「お礼なら、あそこで遊んでくれているみんなに言ってください」

だっサイくんは照れたようにそう言いました。

そして

「おぉ~い!!みんな!!コガルー!お母さんが迎えにきたぞー!!」

と叫びました。

「本当に?」

「ああ!良かった!」

など、コガルーと遊んでくれていた仲間からも安堵の声が上がりました。

コガルーはぴょんぴょんとニイガルーの元へ飛んできて、そのままピョンとニイガルーのお腹の袋に収まりました。

「みなさん、本当にありがとうございました。ほら、コガルー、お礼は?」

ニイガルーに促されて袋から顔をひょこっと出したコガルーは

「みんな、ありがとう!」

と言ってから満面の笑みを作りました。

「本当に良かったね」

みんな、口々にそう言いながら、それぞれの家に帰っていきました。

コガルーは袋の中でニイガルーに一体どんな話を聞かせているのでしょうか。

おしまい

 

 

だっサイくん 短編小説 8話

⭐️<お金って何だろう>

 登場キャラ:なめやん 大阪府、チバノオトシゴ 千葉県、ナマケイヨ、ナマケイコ 愛知県

「せやから、金は天下の回りもんちゅうねん」

なめやんは力を込めて、このセリフを言ってからバアァンッと手に持っていた扇子で机を叩きました。

その迫力に圧倒されているのは、だっサイくんと、グンバードちゃん、そしてなんだかイライラしているように見えるのがチバノオトシゴ、それから、なめやんの話を聞いているのか聞いていないのかよく分からないナマケイヨとナマケイコの親子。

ここは、なめやんの「金儲け塾」で、だっサイくんとグンバードちゃんは、ムサシに「あの塾はめちゃくちゃおもしろくてためになるから行ってくると良いぜ」と言われて、来てみたのです。

しかし、さっきからためになる話というよりも、なめやんがいかに儲けてきたかという話と、いかにケチかという話ばかりで、面白くもなんともない上に、ためにもなりません。

「やっぱりおかしいと思ったのよね~。あのムサシが本当に良い事を私たちに教えてくれるわけがないもの」

グンバードちゃんは少し不機嫌でした。

だっサイくんは

「まぁ、でもお金の話なんて、なかなか聞く機会が無いし、良いんじゃない?」

とのんびり答えました。

「そこぉっ!お喋りはいらんっちゅうに!ええか!俺は今真剣に金儲けの極意について教えてやっとるんや!黙って聞けん奴には金儲けする資格はないし、金儲けで成功する事もない!」

なめやんは熱くなってゲキを飛ばします。

しかし、グンバードちゃんが言うように、先ほどからなめやんは自分がいかにケチかという話と、それからいかに金儲けで成功してきたかという話しかしていないので、隣に座っているチバノオトシゴがイライラするのも無理ない状況でした。

「おいおい、そう言うなら、はやくもっと有益な情報を教えてくれよ。こっちはもう待ちくたびれたぜ」

「まぁまぁ、そう短期になんなや。ええか、今からが大事な話や。さっき俺が金儲けで成功した時に話した株とか投資の事があったが、金儲けしたい奴は、まさにそこなんや。投資や、投資。株や証券で投資して、その動向をくまなくチェックする事で、金っちゅうのは簡単に増えていくんや」

チバノオトシゴのイライラに少し慌てたなめやんは、少し声のトーンを変えて、投資の有益さについて語り始めました。

だっサイくんにはその話はとても難しく、頭の中がぐるぐるしました。

グンバードちゃんも、いまひとつ納得いかないような難しい顔で話を聞いていました。

チバノオトシゴは少し興味ありそうに聞いていました。

ナマケイヨとナマケイコは相変わらずぼーっとしていました。

「うーん、確かにまじめにコツコツ働くよりも、投資に力を入れた方が手っ取り早く稼げそうだな・・・」

チバノオトシゴはそう呟きました。

「せやろ!俺はそうやって資産を増やしてきた!あとは、そうだな・・・交渉やな。どこに行っても、何を買うにしても、いつでもどこでも交渉や!少しでも安く買い物する、これが金を貯めていくための極意や!」

なめやんはそう言って胸を張りましたが、チバノオトシゴは少し顔を曇らせました。

「それは面倒だな。俺はそういう面倒な事が嫌いなもんでね。投資の話は興味深く聞かせてもらったから、参考にしようと思うけど、交渉は性に合わなそうだ」

なめやんはそれを聞いて

「ま、誰にでも得意不得意ちゅうのはあるもんや。自分に合ったやり方ちゅうのを見つけるのがええと思うで」

とアドバイスしました。

「ところで・・・」

なめやんは視線をナマケイヨとナマケイコの方に向けました。

「お前らは何しに来たんや。さっきからボーっとして。そんなにのんびりしてたらな、金儲けなんてできひんで。ええか、株ちゅうのは一秒一刻を争うもんや。ちょっとでもボーっとしてたら大損するで、大損」

そう言ってナマケイヨとナマケイコをギロリと睨みました。

「ん~~~わ~た~し~た~ち~は~・・・」

「ああもう!イライラする!そのしゃべり方!!」

チバノオトシゴがそう言って席を立ちました。

「ありがとな。今日は良い話が聞けたよ。参考にさせてもらう」

そして帰ってしまいました。

会場には、だっサイくんとグンバードちゃん、そしてナマケイヨとナマケイコが残りました。

「で、わたしたちは、なんて?」

なめやんがナマケイヨに続きを促しました。

「お~か~ね~は~い~ら~な~い~」

「ほんならなんで今日来たんや」

なめやんは呆れ顔です。

「お~も~し~ろ~い~は~な~し~が~き~け~る~って・・・き~い~た~か~ら~」

「そうか。それで、俺の話は面白かったんか?」

ナマケイヨはニッコリ笑ってゆっくり頷きました。

へぇ、面白かったんだ、とだっサイくんは少し驚きました。

あんなにボーっとしていたのに、面白いと思ったんだ、と思ったのです。

「あ~な~た~は~す~ご~い~。で~も~、わ~た~し~は~お~か~ね~い~ら~な~い~」

「ま、俺をすごいって言ってくれるんはありがたいな。おおきに。でもお金が要らないんやったら、別に今日ここに来る必要は無かったんやない?」

なめやんはそう言って肩をすくめて、今度はだっサイくんとグンバードちゃんの方を向きました。

「お前らは、どやった?」

だっサイくんはちょっと困ったような顔をして

「ためにはなったんですけど、ちょっと難しくて・・・」

と素直に答えました。

「ん、まあ確かにお前らにはまだ早かったかもしれんな。もうちょっと大人になれば分かるで。気長にな」

なめやんはそう言ってだっサイくんの背中を叩きました。

「ところで、なめやんさんはどうしてそんなにお金儲けに命をかけているんですか?」

グンバードちゃんが質問しました。

「ん?俺か?さっきも言うたけどな、金は天下の回りもんや。金さえあればなんとでもなる、逆に金が無ければ人生路頭に迷う。それだけや。金があれば何でも思い通りや。好きなもん何でも買えるしな、夢も叶えられるで」

なめやんの答えを聞いて、グンバードちゃんは今度はナマケイヨに聞きました。

「ねぇ、ナマケイヨはどうしてお金をいらないって思うの?」

するとナマケイヨはゆっくりと

「え~さ~す~く~な~い~。か~ね~つ~か~わ~な~い~。ま~い~に~ち~し~あ~わ~せ~。の~ん~び~り~」

とニコニコしながら答えました。

その答えを聞いて、グンバードちゃんは考え込むような顔になりました。

「そうか。お金って、人によって必要な度合いが変わるのかもしれないのね」

そして、グンバードちゃんなりに答えを見つけ出したようでした。

だっサイくんは、気になってグンバードちゃんに聞いてみました。

「どういう事?僕らみんなにお金は必要じゃないって事?」

「いや、もちろん、お金は必要だよ。食べたり、飲んだり、生きていくためには。でもそれは必要最低限で良い。あとは、その人がどんな人生を過ごしたいかによって、必要なお金が変わってくると思ったの。なめやんさんの生き方も、ナマケイヨの生き方も、どっちあもアリってこと」

「ほ~、お嬢ちゃん、なかなか鋭いやないかい。ま、俺は金こそが全てや思うてるけどな、でも人それぞれちゅう考え方も嫌いやないで」

なめやんは偉そうにそう言いました。

「私たちのお金の稼ぎ方や使い方は、大人になる中でじっくり考えるっていうのが良さそうだね」

グンバードちゃんはそう言って、なめやんにお礼を告げて塾を出ました。

だっサイくんも後に続きました。

お金は必要なもの。でも、その必要な金額や使い方、稼ぎ方は人それぞれ。

幸せなお金との付き合い方について、みなさんも考えてみてくださいね。

 

 

 

だっサイくん  短編小説 9話

⭐️<だっサイくんと占い>

登場キャラ:飛鳥ちゃん 奈良県、ひも根さん 島根県、かめい、かめりん 三重県、ビワポーク 滋賀県

「ね、だっサイくんって占いとか、興味ある?」

グンバードちゃんがだっサイくんのところへやってきて、そう聞きました。

「占い?」

「うん、この前ね、飛鳥ちゃんに占ってもらったんだけど、これがすっごく良く当たってて、びっくりしちゃって!おもしろかったから、だっサイくんがもし占ってもらった事がなければ1回行ってみると良いよ」

グンバードちゃんは楽しそうにそう言いました。

「へぇ。占いかぁ。何を占ってもらったの?」

「それはヒミツ!でも私の性格とか、私の夢とか、どんどん当てられちゃってビックリしたの。それから占ってもらって、こうすると良い未来が開けるっていうのをやってみたら、本当に良い事が起きたの!」

「ふーん」

だっサイくんは、グンバードちゃんの話を聞いて興味が湧いてきました。

次の日、だっサイくんは飛鳥ちゃんのもとを訪ねてみました。

「グンバードちゃんに聞いたんだけど、飛鳥ちゃんの占いがよく当たるんだって?」

飛鳥ちゃんは、だっサイくんをじっと見つめて

「そうね・・・そういう風に言われることはよくあるわ。でも私は見たものをそのまま伝えているだけだから、当たるかどうかは本人にしか分からないんだけどね。だっサイくんも占いに来たの?何を占いましょうか?」

だっサイくんは、本当に当たるのかどうか確かめたくて、占ってもらう前にこんなことを聞きました。

「ねぇ、占いの前に僕の性格とか、好きなものについて当ててみてよ」

飛鳥ちゃんは、少し困った顔をして

「私は占いはできるけど、透視はできないわ。性格や好みも占いで判断するの。まず、じゃあ、だっサイくんの性格だったり好みだったりを占星術で占ってみるから、ちょっと待っててね」

そして、飛鳥ちゃんは占いを始めました。

だっサイくんはドキドキしながら待ちました。

「だっサイくんは、そうね、とてもおおらかで優しい心をもっていて、誰とでも仲良くできる性格で、だけどちょっとのんびりしていてハングリー精神や闘争心に欠けるわね」

飛鳥ちゃんはそう告げました。

「ハングリー精神は、いつだって持ってるよ。いつもお腹ペコペコだもの」

だっサイくんはそう反論しましたが、飛鳥ちゃんに

「ちがう、ちがう。そういう事じゃないのよ、ハングリー精神って。向上心のこと。仕事でもっと昇進したいとか、テストでもっと良い点が取りたいとか、何かで成功を収めたいとか、そういう心のことよ」

と言われてしまいました。

「う~ん・・・そうか。お腹が空いてるだけじゃダメなんだね・・・。ぼく、向上心が無いのか・・・」

落ち込むだっサイくんに、飛鳥ちゃんは聞きました。

「それで、何を占う?将来について?恋愛?金運?それとも向上心とか闘争心とか、そのあたりの事について占ってみる?」

「う~ん・・・じゃあぼくの将来を、向上心とか、そのあたりと絡めて・・・」

だっサイくんがお願いすると、飛鳥ちゃんは今度はカードを取り出しました。

「じゃあ今度はタロットカードで占ってみるわね」

タロットカードをシャッフルして、テーブルの上にばらまき、ひっくり返してからしばらく眺めて、飛鳥ちゃんは口を開きました。

「う~ん・・・ダメね・・・だっサイくんは、3年後ぐらいに人生に行き詰まるわ」

「えっ!?」

「さっきの向上心の話で言うと、だっサイくんは、3年後に、ある大きな人生の変化に見舞われるんだけど、その時に向上心を出し切れずに失敗してしまう。その後自分に自信を失って、しばらくは立ち直れない。あ、でも5年後には良い未来が待っているわ。これは・・・そうね、とても良いパートナーが現れるって出てるわ」

「そうか・・・僕の人生は5年後まではあんまり良くないのか・・・今年はどうなの?」

「今年は悪くないわよ。変わらずってかんじ。この1週間は水には注意してね」

「水?」

「うん、水難の相が出てるから」

だっサイくんは、飛鳥ちゃんにお礼を言って、立ち去りました。

心の中にはモヤモヤしたものが残りました。

落ち込んでいる様子だったのでしょう。

そんなだっサイくんに、かめいとかめりん親子が声をかけてきました。

「だっサイくん、どうしたの?なんだか元気が無さそうだけど・・・」

「うん、実は・・・」

だっサイくんは飛鳥ちゃんの占いについては話しました。

「だったら、ひも根さんに予見してもらったら?」

「予見?」

「うん、彼女、未来を見る力があるから」

「へぇ。でも、飛鳥ちゃんの占いと同じだったら、ぼく、ますます落ち込んじゃうなぁ・・・」

「もしかしたら違う結果になるかもしれないじゃない」

そう言ってかめいはだっサイくんを無理やりひも根さんのところへ連れていきました。

ひも根さんは、だっサイくんをひと目みただけで

「あなた、今週は水難の相が出てるから気をつけなさい」

と言いました。

「えー!飛鳥ちゃんと同じだ!ぼく、やっぱり怖くなってきたよ・・・」

だっサイくんは、ビクビクしながらも、ひも根さんに未来を見てもらいました。

「ふむ・・・悪くはないわね。未来は、良いものになるわよ」

「へ!?でも、飛鳥ちゃんは3年後には人生に行き詰まるって・・・」

「占いでしょう?私のは予見よ。未来を見ているの。どっちを信じるかはあなた次第。私が見たあなたの未来は、まず来年最愛の相手を見つけて、それから2年後には大きな成功をおさめるわ。それから先は特にものすごく大きな成功をするわけじゃないけれど、失敗もなく、幸せな日々を送れる。そう出ているわよ」

「良かったじゃない、だっサイくん!」

かめいは嬉しそうにそう言いました。

そして

「私たちはもう少しひも根さんとお喋りしていくから、じゃあね」

とだっサイくんを送り出しました。

だっサイくんは混乱していました。

自分の未来は、悪いのか、良いのか、分からなくなってしまったのです。

「でも、ふたりとも、今週は水難の相が出てるって言ったんだよなぁ・・・」

そう呟いた時でした。

ポツリポツリと雨が降ってきました。

「わわっ!雨だ!参ったなぁ・・・はっ!水難の相って、もしかして・・・」

ふたりの言った事が当たったので、だっサイくんはビックリしました。

急いで木の下に入って雨宿りしながら、だっサイくんは、飛鳥ちゃんの占い結果と、ひも根さんが予見した未来について考えていました。

考えれば考えるほど、分からなくなってきます。

「ううう・・・」

頭を抱え込んでしまっただっサイくん。

「何か悩み事かね?」

ふいに声をかけられてだっサイくんが顔を上げると、ビワポークが立っていました。

「うん、ちょっとね・・・」

だっサイくんは、ビワポークに今日あった事について話しました。

黙ってだっサイくんの話を聞いていたビワポークは、だっサイくんの話が終わると、ひとこと

「まだまだ修行が足りないね」

と言いました。

「おぬしは、占いだの、予見だの、そんな事に振り回されているようだが、何より大切なのは己をよく知り見極める事だ。そして己の心身を鍛え、自ら未来を切り拓いていくことだ。占いや予見は興味深くはあるが、全てではない。このこと、忘れてはならんぞ」

ビワポークはそう言うと、あっという間にどこかへ消えてしまいました。

気づけば雨はもう上がっていて、綺麗な虹がかかっていました。

「己の心身を鍛え、自ら未来を切り拓くこと・・・そうか・・・」

不安でいっぱいだっただっサイくんの心に、ビワポークの言葉が温かく沁み込んできました。

だっサイくんは、元気いっぱいに木の下から道端へジャンプし、胸を張って歩き始めました。

自分の未来は自分で切り拓く、良い言葉だな、と思いながら。

おしまい

 

だっサイくん 短編小説 10話

⭐️<ダンス!ダンス!ダンシング!>

登場キャラ:ナルトペンギン 徳島県、バリごり君 福岡県、ばってんぐま 熊本県 イバラキ犬 茨城県

だっサイくんとグンバードちゃんは、今日も散歩を楽しんでいました。

森林浴ができると話題の小高い丘を、プチハイキングのような気分で歩いて、新鮮な空気を吸いながら清々しい気持ちになっていました。

ふと、ガサガサという音が聞こえてきて、だっサイくんは立ち止まりました。

「ん?今何か聞こえたような・・・」

「そう?」

グンバードちゃんは何も気づかなかったようです。

「気のせいかな・・・」

そう言って再び歩き出したふたりでしたが、またしてもガサガサという音を聞いて

「やっぱり、何かいるような気がする・・・」

とだっサイくんは言いました。

「うん、今のは私にも聞こえた。何だろう・・・」

ガサガサという音はどんどん大きくなっているようです。

「なんだか怖いよね・・・」

「お化け、とか・・・?」

ドキドキしながらふたりが音のする方を見ていると、木陰からばってんぐまが顔を出しました。

「なんだ、ばってんぐまか。おどろいた!やぁ」

だっサイくんは気軽に声をかけました。

すると、ばってんぐまは真っ赤になって

「あの・・・あの・・・ええと・・・」

と言って引っ込んでしまいました。

「ん?」

だっサイくんは不思議な気持ちでばってんぐまが去っていくのを見ていました。

「どうしたんだろうね、ばってんぐま」

だっサイくんとグンバードちゃんが、そんな話をしながら歩いていると、向かい側からナルトペンギンとバリごり君が歩いてきました。

「やぁ、君たち。今、ばってんぐまの話をしてたかい?」

バリごり君が話しかけてきました。

「うん、さっきばったり会ったんだけど、なんていうかな、すぐどこかへ行っちゃったんだ」

だっサイくんがそう答えると、バリごり君は少しだけ表情を曇らせました。

「そうか。やっぱりな。あいつ、極度の人見知りでさ。なかなか色んなやつと仲良くできないんだ」

ナルトペンギンが続けました。

「そうそう、でもみんなと仲良くなりたがってるんだよ。それなのにどうしても恥ずかしいらしくて、悩んでるんだ」

だっサイくんとグンバードちゃんは、納得しました。

「ああ、それで、さっき会った時も真っ赤になってどこかへ行っちゃったのね」

「どうにかしてやりたいと思っててさ、さっきふたりで計画を立ててたんだけど、ダンスの力でばってんぐまを社交的な性格に変えられないかな」

バリごり君はそう話しました。

「君たちも、良ければ協力してくれないかな。数が多い方がばってんぐまにとっても良いような気がするし、盛り上がるし」

バリごり君にそうお願いされて、だっサイくんとグンバードちゃんは快く引き受けました。

そして、ダンス大作戦が始まったのです。

まず、ナルトペンギンがダンスが得意なので、ノリノリな曲でステップを踏み、それにひょうきんもののバリごり君が参加して、だっサイくんとグンバードちゃんを誘ってみんなで楽しく踊るという流れで作戦は決行されました。

近くでばってんぐまが見ているのをみんな分かっていたので、それとなくばってんぐまを意識しながら踊る事にしました。

楽しく踊っていたのですが、ばってんぐまはなかなか出てきません。

「う~ん・・・ダメかな・・・」

ナルトペンギンが小声で呟きました。

「うん、あんまり効果なし・・・かな・・・」

だっサイくんが不安そうに答えました。

と、そこにイバラキ犬が通りかかりました。

「みんな、何やってるの?」

「やぁ、イバラキ犬!踊ってるんだよ、楽しいよ」

だっサイくんは、ここである事を思いつきました。

ちらっとばってんぐまの方を見てから、イバラキ犬に向かって

「イバラキ犬も一緒に踊らない?楽しいよ!」

と言い出したのです。

「え、でもぼく、ダンスとか、得意じゃないし・・・」

イバラキ犬は自信なさそうにそう答えました。

イバラキ犬の存在に気付いたバリごり君が

「お!へいへい!一緒にダンスしないかい?楽しいぜ!ヘイカモン!」

と誘いました。

ナルトペンギンは

「ダンスに自信が無いなら簡単なステップを教えるよ!」

と言って、イバラキ犬にダンスのシンプルなステップを教えました。

ナルトペンギンに簡単なステップを教えてもらったイバラキ犬は、音楽に合わせて身体を動かしてみました。

少しぎこちなかったけれど、バリごり君が

「ナイス!ブラボー!すばらしい!いいねいいね!ヒュー!!」

とものすごく褒めちぎったので、イバラキ犬はしだいに調子が出てきたようでした。

「楽しいね!」

イバラキ犬が笑顔でそう言ったのを、物陰に隠れていたばってんぐまは聞き逃しませんでした。

そして、そんなばってんぐまを、だっサイくんは見逃しませんでした。

「ねぇ、ばってんぐま、君も一緒に踊らない?」

だっサイくんは、ばってんぐまがいる方向を向いて声をかけました。

「ナルトペンギンが分かりやすくダンスを教えてくれるし、バリごり君もサポートしてくれるし、ぼくらも一緒に踊るから恥ずかしくないよ!」

ばってんぐまに声をかけるだっサイくんを見て、グンバードちゃんも応援に入りました。

「そうそう、楽しいよ!音楽に合わせてみんなで一緒に踊るの!おいでよ!」

それでもなかなか出て来られないばってんぐまのところへ、イバラキ犬が近づいていきました。

「ばってんぐまくん、なかなか出て来られない気持ち、よく分かるよ。ぼくもダンスなんて無理って思ったし、恥ずかしいなぁって思ってた。でも、ナルトペンギンくんに教えてもらって、みんなと一緒にダンス踊るの、楽しいよ」

そして、ばってんぐまの手を取ってみんなの輪の中に連れてきました。

ばってんぐまはとても恥ずかしそうにモジモジしていたし、うつむいていたけれど、イバラキ犬と一緒にナルトペンギンにダンスのステップを教えてもらううちに、ステップに一生懸命になってきました。

ステップに集中しているうちに、ばってんぐまの顔の赤らみも引き、うつむいていた顔も上がってきました。

ダンスに一生懸命なばってんぐまを見て、バリごり君がまた

「いいね、いいね!」

と褒め始めました。

一瞬恥ずかしそうな顔をしたばってんぐまでしたが、バリごり君がほめてくれるのをイバラキ犬が嬉しそうに聞いている姿を見て、自分にも自信がついてきたのか、楽しそうにステップを踏むようになりました。

「よし!じゃあみんなで手をつないで踊ろう!!」

バリごり君が提案して、みんなで輪になって手をつないで踊りました。

みんなニコニコな笑顔でした。

楽しく踊り、一気に仲良くなりました。

踊り終わった後、自然と拍手がわいて、みんな打ち解けた雰囲気になりました。

ばってんぐまは

「みんな、ありがとう。仲間に入れてくれて。とっても楽しかったよ」

とお礼を言いました。

「良かったのはこっちの方だよ。ぼくたちみんな、ばってんぐまと仲良くなりたいと思ってたんだから」

だっサイくんがそう言うと、ばってんぐまが

「ぼくのために、ごめんね・・・」

とうつむいてしまいました。

そこにすかさずイバラキ犬がフォローに入りました。

「誰だって苦手なことはあるし、ぼくもどちらかというと引っ込み思案だから、ばってんぐまくんの気持ちもよく分かるよ。でも、ばってんぐまくんもみんなと仲良くなりたかったんだよね。みんなで手をつないで踊ると楽しかったでしょ?誰かと仲良くなって繋がれると嬉しいよね。それだけで良いんじゃないかな」

ばってんぐまは、イバラキ犬を見て

「ほんと?」

と言いました。

みんな、うんうん、とうなずきました。

ばってんぐまはニッコリと笑顔になり、

「ありがとう」

と言いました。

 

 

 

だっサイくん 短編小説 11話

⭐️<だっサイくんと癒しの泉>

登場キャラ:りすっちゃ 大分県、りゅうごどん 鹿児島県、はりたろう 岡山県、グンバードちゃん 群馬県

「だっサイくーん!」

グンバードちゃんがパタパタとだっサイくんのところへ飛んできました。

「やぁ、グンバードちゃん。また何かおもしろい話?」

だっサイくんがそう聞くと、グンバードちゃんは

「あのね、癒しの泉っていうのがあるんだって!」

と言いました。

「癒しの泉?」

「そう!なんでも、その癒しの泉に入れば身体の痛いところが治ったり、健康になったり、良いことが沢山あるんだって!」

「へぇ、それは良いね!で、どこにあるの?」

だっサイくんはワクワクしながらそう聞きました。

「南の方だって聞いたわ。ここからだと結構歩くみたいだけど、行ってみる価値はあると思わない?」

グンバードちゃんに誘われて、だっサイくんは癒しの泉を探しに行くことにしました。

出発してしばらく経ってお弁当を食べるために木陰に入った時でした。

何かキラッと光るものがだっサイくんの目に留まりました。

「ん?何だ、あれ?」

だっサイくんが光るものを手に取ってまじまじと見てみました。

それは丸い玉で、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていました。

「なんだろう・・・グンバードちゃん、知ってる?」

グンバードちゃんは首を横に振りました。

「ううん、知らない。でもとても綺麗だね」

ふたりで光る玉に見惚れていると、茂みの中からはりたろうが出てきました。

「おいおいおいおい、聞き捨てならないな。その玉が何か知らないってのかい?」

「あ、はりたろう、やぁ。君はこの玉が何の玉なのか知ってるの?」

だっサイくんがそう聞くと、はりたろうは呆れ顔で首を振り

「やれやれ、これだから素人はダメなんだ。いいか、よく聞けよ、こりゃ竜の玉だ」

と言いました。

「竜の玉?」

「そう。竜の玉」

「なんか・・・スゴイね・・・!どうりで綺麗だと思ったら・・・」

だっサイくんはしげしげと竜の玉を見ながら、そう言いました。

「竜の玉には何か意味があるの?パワーとか、幸運の玉とか、願いが叶うとか・・・」

グンバードちゃんが期待に目を輝かせてはりたろうに聞きました。

「持ってるだけで幸運が降り注ぐとも言われているけど、ホントかどうかは君ら次第だね。あとは、それを7つ集めてりゅうごどんの所へ行けば、砂風呂に入れさせてもらえるぜ」

はりたろうはそう言って、うっとりとした表情になりました。

「あの砂風呂はサイコーだった。俺も1回だけ竜の玉を集めて入ったけど、今でも忘れられないな」

「それって癒しの泉よりも良いのかな?」

だっサイくんが何気なくグンバードちゃんに聞くと、それを聞いていたはりたろうが、また口を開きました。

「癒しの泉に行くのか?砂風呂も癒しの泉も、どっちも捨てがたいぐらい気持ちいいぞ~。両方楽しんで来たらいいさ。まずは竜の玉を7つ集めるところからだな!」

そこで、だっサイくんとグンバードちゃんは、竜の玉を探しながら、癒しの泉と砂風呂を目指しました。

竜の玉を探すのは、少し大変でしたが、よく晴れた日だったので太陽の光を反射してキラリと光るものを見つけるのは、それほど難しくありませんでした。

グンバードちゃんが空から探したので、思っていたよりもずっと早く7つ集めることができました。

7つの竜の玉を持って、意気揚々と歩いていくと、向こう側から歩いてきたりすっちゃが声をかけてきました。

「あっ!!それ、竜の玉かい?」

りすっちゃは目を輝かせました。

「そうだよ。これでりゅうごどんの砂風呂に入れてもらうんだ」

だっサイくんがそう答えると、りすっちゃは

「いいな~。羨ましい!ね、ね、ぼくも一緒に付いてっちゃダメかな?ぼく、温泉が大好きで、もし砂風呂に付いてって良いって言ってくれたら、とっておきの温泉を紹介するよ!」

と言いました。

「温泉?」

だっサイくんが聞き返すと

「そう!聞いたこと、ないかな。癒しの泉のことなんだけど・・・」

と、りすっちゃが答えました。

「「癒しの泉!!」」

だっサイくんとグンバードちゃんは同時に叫びました。

「ぼくたち、まさに癒しの泉を探していたんだ!」

「そうそう、その途中で竜の玉を見つけて、はりたろうにりゅうごどんの砂風呂の話を聞いて、どっちも入れたらいいねって言ってたの」

りすっちゃはそれを聞いて、ますます嬉しそうにニッコリ笑いました。

「だったら、最高の温泉に案内するよ!」

こうして、りすっちゃも加わって、みんなでりゅうごどんの元へ向かう事になりました。

りゅうごどんの砂風呂に到着して、りゅうごどんに竜の玉を見せると、りゅうごどんは喜びました。

「よく見つけたなぁ。さぁ、思う存分砂風呂を楽しんで!」

りすっちゃは慣れたもので、ものすごいスピードで砂風呂に潜り込み、気持ちよさそうにくつろぎ始めました。

だっサイくんとグンバードちゃんは初めてだったので、りゅうごどんに砂風呂の入り方を教えてもらいました。

「わぁ、気持ちが良いねぇ」

だっサイくんはうっとりした表情で、そう言いました。

「身体の芯から温まるってかんじ。良い汗が出てきたわ」

グンバードちゃんも気持ちよさそうです。

「これこれ、たまらないなぁ」

りすっちゃはすっかりリラックスして、砂風呂を満喫しました。

りゅうごどんはみんなの姿を見て、満足気に笑って

「気持ちが良いだろう。俺の自慢の砂風呂さ。血行を良くして、身体の中の悪い毒素を出してくれるんだ。ダイエット効果もあるんだぞ」

と言いました。

「ダイエット効果もあるなんてサイコー!」

グンバードちゃんは嬉しそうにはしゃぎました。

砂風呂を満喫しただっサイくんとグンバードちゃんとりすっちゃは、りゅうごどんにお礼を言って、温泉に向かいました。

「ここが、ぼくのおすすめの温泉だよ!」

りすっちゃがふたりを連れて来たのは、小ぢんまりとした温泉でした。

「なんだか変なニオイがするね・・・」

だっサイくんは思わず顔をしかめました。

「これが良いんだよ!」

りすっちゃはそう言って、この温泉がどれだけ素晴らしいか、説明し始めました。

「このニオイは、硫黄っていうもののニオイで、ここの温泉の特徴なんだ。最初はちょっとびっくりして、慣れないかもしれないけど、慣れればこのニオイこそ、あ~温泉に来た~!って感じが高まって、サイコーなの!ここの温泉は、浸かれば肌がつるつるになるし、肩こりや腰痛にもよく効くから、おじいちゃんやおばあちゃんたちにも評判なんだよ」

りすっちゃの温泉愛に圧倒されただっサイくんとグンバードちゃんは、

「わ・・・分かった、分かった!とにかく入ってみよう!」と言って、温泉に入りました。

最初はビックリした硫黄のニオイにも、少しずつ鼻が慣れてきて、だっサイくんは、確かに肌がつるつるになるのを感じました。

そして、身体がじんわりとほぐされていくのも感じました。

「あ~気持ちいいっ!」

グンバードちゃんもそう言って、目を閉じてリラックスしています。

「身体がほぐれていくみたい!」

だっサイくんと同じ感想でした。

「本当に、癒しの泉だね」

だっサイくんがそう言うと、グンバードちゃんも

「本当に。心身ともに癒されるわ~」

と答えました。

「ぼくが温泉を大好きな理由も、分かってもらえた?」

りすっちゃがそう言ったので、ふたりとも

「もちろん!」

と答えました。

こうして、だっサイくんとグンバードちゃんの癒しの泉探しの旅は、無事成功したのでした。

 

 

 

だっサイくん 短編小説1 2話

⭐️<だっサイくんと美しの森>

登場キャラ:グンバードちゃん 群馬県、みやおん 宮崎県、うしべちゃん 富山県、とちろう栃木県

だっサイくんが、大好物の深谷ねぎをパクパク食べていると、グンバードちゃんがやって来ました。

「こんにちは、だっサイくん、あら、また深谷ねぎを食べてるの?」

「やぁ、グンバードちゃん。だって深谷ねぎはぼくの大好物だもん。グンバードちゃんだって知ってるだろ?」

「知ってるわよ。でも、毎日毎日深谷ねぎばかりで飽きないの?他のものを食べたいとか、思わないの?」

グンバードちゃんにそう聞かれ、だっサイくんは少し考えました。

「他にも美味しいものが沢山あるのは知ってるし、食べてみたいな~とは思うけど、ひとまず深谷ねぎがあれば、ぼくは幸せなんだ」

だっサイくんの答えを聞いても、グンバードちゃんは食い下がります。

「ね、またこれも噂話なんだけど、南の方に美しの森っていう森があって、そこにはマンゴーがたわわに実っているんだって!完熟のマンゴーってすっごく甘くて美味しいの!ぜひ行ってみたいと思ってるんだけど、だっサイくんも一緒に行かない?」

完熟のマンゴー、確かに魅力的です。

だっサイくんは、大好きな深谷ねぎを頬張りながらも、マンゴーの事を想像して、よだれが出てきました。

「いいね。行こう行こう」

こうして、グンバードちゃんとだっサイくんは、美しの森へ出かけたのです。

しかし・・・・・・

「な・・・なに、ここ・・・」

「ここが・・・美しの・・・森・・・?」

ふたりはちゃんと地図通り、そして道中で行きあった友だちに道を確認して、美しの森にやって来たつもりでした。

でも、ふたりの目の前に広がる森の景色は、想像とは全く違うものでした。

そこには荒れ果てた森のようなものが広がっていました。

森とも呼べないような、その景色。

切り株と、枯れた木々が点々と散らばり、マンゴーなんてどこにも見当たらず、それどころか、生き物の気配も感じられませんでした。

「本当にここが美しの森なのかな・・・?」

だっサイくんは不安そうにグンバードちゃんに言いました。

「でも、確かに地図はここを指してるし・・・」

グンバードちゃんも困惑しているようでした。

ふたりは、少し探検してみることにしました。

もしかしたら、もう少し奥まで進めば、マンゴーがたわわに実る本物の美しの森が見つかるかもしれない・・・そう思ったのです。

しかし、どれだけ奥へ進もうと、荒れた景色が続くだけでした。

「あれは・・・」

だっサイくんが何かに気づきました。

大きな身体が横たわって上下にかすかに動いています。

「みやおん・・・?」

だっサイくんが近づくと、やはりみやおんでした。

「みやおん、起きて、ぼくだよ、だっサイだよ」

だっサイくんは、みやおんを揺り起こしました。

「ん・・・?誰だ、俺の眠りを妨げる奴は・・・・・・」

みやおんはゆっくりとだっサイくんの方を見ました。

「おお、だっサイくんじゃないか!」

「みやおん、起こしちゃってごめんなさい。でも、聞きたいことがあって・・・。ここって美しの森だよね?」

だっサイくんは、みやおんに聞いてみました。

「そうだ。美しの森だ。今は美しくも何ともなくなってしまったが・・・」

みやおんはそう答えました。

「何が起きたの・・・?」

恐る恐るグンバードちゃんが尋ねると、みやおんは苦々しげにこう言いました。

「人間さ。人間が、このあたりの木を全部刈っていってしまったんだ。森林伐採ってやつだな。おかげで毎年実ったマンゴーも姿を消した。とんでもないことだ・・・」

みやおんは深いため息をつきました。

「そんな・・・どうにかならないの?」

グンバードちゃんがそう言いました。

「どげんかせんといかんのは分かってるんだが・・・」

辛そうなみやおんの姿を見て、だっサイくんも、グンバードちゃんも心が痛みました。

「そうだ!こんな時こそ、とちろうに相談するのが良いんじゃないかな」

だっサイくんがそう言って、ふたりはみやおんを連れてとちろうの所へ行きました。

「あれ、誰かいる」

とちろうの家には、先客がいました。

「うしべちゃんじゃない?」

グンバードが言いました。

「おーい、うしべちゃん!とちろう!こんにちは!」

だっサイくんが挨拶すると、うしべちゃんととちろうがこちらを見ました。

「おお、だっサイくんにグンバードちゃん、それから、みやおんじゃないか。どうしたんだい?」

だっサイくんは、とちろうに美しの森の話をしました。

「そうか。そんな事が。丁度うしべちゃんとも環境破壊の話をしとったんだよ」

「え?そうなの?」

「うん。私の暮らしているところで、星が見えなくなってしまって・・・。夜になっても空が黒くならなくて、なんだかモヤみたいなものがかかっているの・・・。おまけに仲間たちがみんな咳き込んだり、体調が悪いって言いだしたりして・・・それで相談に・・・」

うしべちゃんは悲しそうにそう言いました。

「これも、人間のせいなの?」

グンバードちゃんはとちろうに聞きました。

「ああ、そうじゃな。公害ってやつだ。排気ガスやなんかで空が汚染されてしまって、星が見えなくなるし、空気が汚れてしまうんだよ」

「美しの森と同じだ。本当に、どうしようもないな、人間ってやつは・・・」

みやおんがため息交じりにそう言いました。

「でも、どうして人間たちはそんな事を・・・?」

うしべちゃんがそう言うと、グンバードちゃんがそれに答えました。

「便利さとか、あとは、例えば美しの森なら、マンゴーを取りすぎたり木材を取りすぎたりしたって事じゃない?勝手な人間たちが悪いのよ」

「まぁまぁ、気持ちは分かるが、人間も自分たちの過ちに気づいてどうにかしようと頑張っているんだよ。例えば排気ガスを出さないように努力したり、美しい森を取り戻すために木を植えたり、色々やってるんだ」

とちろうはそう言って人間をかばいました。

「良い人間もいれば、悪い人間もいるってことだね」

だっサイくんは、そう言ってから

「ぼくたちにも何かできる事はあるかな」

と考えました。

「あるさ」

とちろうが答えました。

「我々にできることも沢山あるぞ。美しの森に少しずつ木を植えて、それから守って育てていくんだ。そうすればマンゴーの実もまた収穫できるようになる」

「そうだな、人間ばかり頼らずに、自分たちでもどうにかしないといけないな」

みやおんはそう言って

「よし!もう一度、マンゴーがたわわに実る美しの森をよみがえらせるために、がんばるぞ!」

と気合を入れました。

「ぼくたちも手伝うよ」

だっサイくんはそう言って、みやおんとガッチリと握手しました。

美しの森にマンゴーがたわわに実るのは、それからずっと先の事でしたが、みやおんとだっサイくん、そして人間たちの努力のかいあって、美しの森はマンゴーが実る美しい森として、やがて蘇る事になるのでした。

 

 

 

だっサイくん  短編小説 13話

 ⭐️<心を覗く不思議な双眼鏡>

登場キャラ: ふーまちゃん 岐阜県、みやカイ 宮城県、ハムミ 秋田、オオワカミ 和歌山県、ムサシ 東京、 イバラキ犬 茨城県

この世には摩訶不思議なものが溢れています。

そう、それはある日突然あなたの手元に巡ってきて、あなたの人生に刺激と、それから大きな変化をもたらすかもしれません。

だっサイくんは、ある日、不思議な双眼鏡を拾います。

「誰かの落とし物かなぁ・・・」

だっサイくんはそう思い、持ち主を探そうと思いました。

ふと、興味が出てきて、双眼鏡を覗いてみると、不思議なことに、遠くのものがよく見えるわけではなく、特に何も変わりません。

「なぁんだ。おもちゃか、にせものだな」

だっサイくんはそう思いました。

しかし、双眼鏡を目に当てたままのだっサイくんに後ろから

「あれ、だっサイくんじゃない、こんにちは」

と声をかけてきたふーまちゃんの方をくるっと振り返っただっサイくんは、驚きました。

(だっサイくんとこんなところで偶然出会うなんて、嬉しいな。今日は良い日だ!)

なんと、ふーまちゃんの心の中が浮かび上がって見えたのです。

だっサイくんは慌てて双眼鏡を外しました。

そこにはいつものふーまちゃんがニコニコ笑いながら立っています。

「や、やぁ」

「双眼鏡なんか持って、どうしたの?何か観察?それとも探し物?」

ふーまちゃんにそう聞かれただっサイくんは慌てて

「なんでもないよ。ちょっと、ね。ははは」

と答えました。

それからふーまちゃんと別れただっサイくんは、双眼鏡を覗いて、みんなの心の中を覗こうと思いました。

こんな面白い双眼鏡、今まで見たこともありませんでしたので、だっサイくんはワクワクしました。

「あら、だっサイくんじゃない」

ハムミが現れたので、だっサイくんはすかさず双眼鏡をかざしました。

(だっサイくんにお色気作戦を使えば、私にメロメロになって何でも言う事聞いてくれるんじゃないかしら。ふふっ。優しくしとこっと!)

ハムミの心の中は、男を誘惑して自分の言いなりにする事でいっぱいのようです。

だっサイくんはすぐにハムミに別れを告げ、次の友達を探しにいきました。

次に出会ったのはみやカイでした。

海賊に誘われたことを自慢げに話しながらも、心の中では

(だけど、海賊は悪い事をするからな。オレは絶対に海賊にはならないんだ。でも・・・海賊ってかっこいいんだよなぁ・・・良い海賊ってどこかにいないかなぁ・・・)

と思っている事が分かりました。

いつも海賊に誘われることを自慢しているのに、実は正義感に満ちている良い奴だったというのが分かって、だっサイくんはみやカイの事を見直しました。

他にも、オオワカミやムサシは、やっぱり世界征服や自分がいかに強くなるかばかり考えているんだな、という事や、イバラキ犬はぼーっとしているようでいつも幸せなんだな、という事など、みんなの心の中を覗くと、思っている通りの事を考えている友達もいれば、意外な事を考えている友達も、色々でした。

「みんな、色んなことを考えているんだなぁ」

だっサイくんは、ひとり呟きました。

と、だっサイくんの目にグンバードちゃんの姿が映りました。

そういえば、いつも一緒にお喋りを楽しんでいるグンバードちゃんですが、最近だっサイくんとあまり一緒にいません。

だっサイくんは嬉しくなって声をかけました。

「グンバードちゃん、何してるの?」

そして双眼鏡を目にあてました。

「え!あ!だっサイくん!こんにちは!元気?」

グンバードちゃんは笑顔でしたが、心の中を覗いただっサイくんはビックリしました。

(うわー!だっサイくんと会っちゃった!嫌だなぁ・・・もう、なんでこんな時に限って・・・)

「ちょっと、何その双眼鏡?また何かの遊び?」

グンバードちゃんにそう言われて、だっサイくんは慌てて双眼鏡を目から外しました。

目の前にはグンバードちゃんの、いつもと変わらない笑顔があります。

「ん?どうしたの?」

グンバードちゃんにそう聞かれて、だっサイくんは

「いや、なんでもないよ。あっ!ぼく行かなきゃいけないところがあるんだった!じゃあね!」

そう言ってだっサイくんはグンバードちゃんの前から逃げるように姿を消しました。

遠くから双眼鏡を覗いてみると、

(良かった・・・だっサイくん、行ってくれた・・・)

というグンバードちゃんの心の中が見えました。

だっサイくんはショックを受けました。

ずっと仲良しだと思っていたグンバードちゃんが、ぼくに会いたくないと思っていたなんて・・・。

気づけば、涙がひとつぶ、またひとつぶ、だっサイくんの目から溢れてきました。

ポロポロ、ポロポロ・・・

ポロポロと零れた涙は、やがて滝のようになって、だっサイくんは、誰にも聞こえないようにひとりぼっちになって、大声をあげて泣きました。

もう、こんな双眼鏡、いらない。

こんなものを使ったから、こんなに悲しい思いをしたんだ。

だっサイくんはそう思って、双眼鏡を、見つけた場所にそっと戻しました。

そして、とぼとぼと、ひとりぼっちで歩いて帰ろうとしました。

その時です。

「あ!いたいた!だっサイくーん!!」

グンバードちゃんが呼ぶ声がしました。

「どこに行ってたのよ!もう!探したんだから!」

グンバードちゃんは息をきらしてそう言いました。

「来て来て!早く!!」

そしてだっサイくんを急かしました。

(なんで?どうして?グンバードちゃん、ぼくのこと、嫌いになったんじゃないの?)

だっサイくんは、わけがわからずに困惑しました。

困惑したままグンバードちゃんについていっただっサイくんは、木陰に到着すると、グンバードちゃんに目隠しをつけられました。

「何するの?どういうつもり??」

だっサイくんは不安になってそう聞きました。

「いいからいいから」

グンバードちゃんは、心なしか楽しそうにそう言いました。

そして・・・

「さぁ、だっサイくん、目隠し、取っていいよ!」

グンバードちゃんにそう言われて、だっサイくんがビクビクしながら目隠しを取ると、目の前に大きなケーキとプレゼントが置かれていました。

「ハッピーバースデー!だっサイくん!!」

「え?え??」

だっサイくんは驚いて目をまんまるくしました。

「も~今日は31日 焦ったよ~。だっサイくん、突然話しかけてくるんだもん。ばれちゃうかと思った、サプライズ」

「サプライズ・・・!」

(そうか・・・!グンバードちゃんがぼくに会いたくないって思ったのは、サプライズの準備をしているのを見られたくなかったからか・・・)

だっサイくんは、双眼鏡で見たグンバードちゃんの心の中を思い出して、ほっとしました。

(嫌われたわけじゃなかったんだ・・・)

そう思うと、嬉しいやら、安心したやらで、だっサイくんは泣いてしまいました。

「も~、泣くほど嬉しいの?」

グンバードちゃんは嬉しそうにニコニコしています。

「ありがとう!ぼく、最高に幸せものだ!!」

だっサイくんは、とびっきりの笑顔でバースデーケーキにかぶりつきました。

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