短編小説 七福神
⭐️<笑う門には福来る>
七福神が暮らす宝島では、今日も神様たちがそれぞれ楽し気に過ごしています。
人間たちに幸せや福を届けるために宝船にみんなそろって乗るのは年に数回だけなので、普段は宝島で暮らしている神様たち。
太陽がさんさんと降り注いで、海は穏やかで、とても平和な時間が流れています。
弁財天のべんてんちゃんが奏でる琵琶の音色が優しく島を包み、毘沙門天のビシャーンが魔物から守ってくれて、とても穏やかな島で、神様たちは暮らしているのです。
恵比寿のえびすんは、毎日のように釣り竿をもって海へ釣りに出ます。
その目的は立派な鯛を釣る事です。
宝島を取り囲む海には沢山の鯛が暮らしていて、えびすんは必要な時に見事な鯛を釣り上げられるよう、日々練習しているのです。
えびすんが釣った鯛は、いつも他の神様たちにふるまわれます。みんなこの鯛をとても楽しみにしています。
しかし、最近どういうわけか、鯛が釣れないため、えびすんは落ち込んでいました。
商売繁盛、五穀豊穣の神様としては、その豊かさの象徴となる鯛を持っていないと、恵比寿という神様のイメージが崩れてしまいます。
「うぅ~ん・・・なぜだろう・・・」
えびすんは難しい顔をして考え込みました。
海が荒れているわけでもないし、魔物が邪魔をしているわけでもないし、何か問題があるとは思えません。
「わしの運が無いだけか・・・?だとしたら大問題だぞ・・・」
神様なのに運が無いなんて事はあってはならないことです。
もし、ただ運が悪いだけだとしたら、もしかしたら自分は恵比寿様として失格なのかもしれない・・・そう思うと、えびすんは急に不安になってきました。
「よっ!えびすんじゃないか!!どうしたんだよ!なんかしけた顔して、珍しいな」
落ち込むえびすんに声をかけてきたのは、布袋のほてっつぁんでした。
ほてっつぁんは、夫婦円満の神様で「笑う門には福来る」という笑門来福の神様でもあります。そのため、いつも、どんな時でもニコニコの笑顔を絶やしません。
口癖は「大丈夫!なんとかなるさ!」で、どんな困難に直面しても、笑顔だけで乗り越えてきました。
そんなほてっつぁんは、元気が無い人や、落ち込んでいる人を見ると、かならず笑門来福のアドバイスを送ります。
「鯛がなかなか釣れなくて、僕には運が無いのかな、と思って・・・運の無い神様なんて神様失格だよな・・・」
そう言って泣き出してしまったえびすんに、ほてっつぁんは、いつものように笑門来福の話をしはじめました。
「いや~、そんなに落ち込むなよ!そうやってうじうじしていると、それこそ全部の運が逃げちまうよ。人生、良い時もあれば、ちょっとばっかし悪い事が起こる事があるもんだ。それは神様だって同じ事だろ。それをいちいち気にしていたら神様なんてやってらんないさ。笑う門には福来るっていつも言ってるけど、笑えば運は向いてくる!!何よりも、笑えば全てが前向きに感じられるようになるさ!!それが一番!ニコニコしていれば、幸せだろう?その気持ちが一番なんだ。笑わなくても笑っても、現実が何も変わらないんなら、笑ってた方が良いだろう?」
そしてカラカラと笑い、えびすんに笑顔を向けました。
その笑顔につられて、えびすんが
「たしかにそうかもしれないな」
と言い、ニッコリ笑うと、そこに大黒天のダイコックが通りかかりました。
「おふたりさん、ニコニコして、何か良い事でもあったのかい?」
ダイコックがそう聞くと、ほてっつぁんが
「えびすんが、鯛が釣れないって落ち込んでたからさ、いつもの笑門来福で元気づけてやったんだよ!」
と、ガハハと豪快に笑いました。
そのほてっつぁんの言葉を聞いて、えびすんは鯛が釣れなかった事を思い出して、また少し落ち込んだような顔になってしまいました。
ダイコックはその表情の変化にすぐに気が付いて
「それは災難だったな。じゃあ俺もひとつ手助けするとしようかね」
と、打ち出の小づちを降りました。
「俺は、開運の神様だからな。この打ち出の小づちを一振りすれば、本当に必要なものがポンと飛び出すってわけよ!」
すると、ダイコックが言った通り、打ち出の小づちから1本の釣り竿が出てきました。
「釣り竿・・・?」
えびすんが目を丸くして、出てきた釣り竿をまじまじと見つめました。
「それを使えば、もしかしたら鯛がほいほいかかるかもしれないな」
ダイコックはそう言って、出てきた釣り竿をえびすんに渡しました。
「ありがとう、ダイコック。さっそくやってみようかな」
えびすんはそう言って、釣り糸を海に垂らしました。
ほてっつぁんもダイコックも見守っています。
すると、さっそくグンと釣り糸が引っ張られたのです。
「おお!さっそくか!?」
ほてっつぁんが興奮した声を出しました。
えびすんは力いっぱい釣り竿を引き上げました。
ザッパーン!!
ものすごいしぶきをあげて、海から飛び出してきたのは、それはそれは大きく立派な鯛でした。
「すっげー!!」
ほてっつぁんは感激しています。
「ほう、やるな!」
ダイコックも満足げです。
えびすんは、久々の大物に大興奮でした。
「ダイコック!ありがとう!君が出してくれた釣り竿のおかげだ!!」
しかしダイコックは笑いながら
「いやいや、君の実力と、それから前向きな心のおかげだよ。君がほてっつぁんと楽しそうに笑っていたから、俺が興味をもって声をかけた。そしてちょっとだけ力を貸して、あとは君の実力で鯛を釣り上げた。笑う門には福来るってのは、まさにこのことだろう。ほてっつぁんにも感謝しなくちゃいけないよ」
と答えました。
「たしかに。ほてっつぁんも、ありがとう」
えびすんがほてっつぁんにも礼を言うと、ほてっつぁんはまた
「いいってことよ。みんな笑顔で万事解決!!」
とガハハと笑いました。
「今日は大漁だ!みんなに知らせて宴を開こう!」
えびすんは嬉しそうにそう言って、釣り上げたばかりの特大サイズの鯛を大切に抱えて、他の神様たちにも宴を知らせに走っていきました。
短編小説 七福神
⭐️<べんてんちゃんと魔法の琵琶>
ここは七福神の神様たちが暮らす宝島。
神様たちはとっても仲良しで、人間たちに福を届けるために宝船に乗って航海へ出発します。でも、それはお正月や結婚式など、特別な行事がある時だけで、普段は宝島で暮らしているのです。
毘沙門天のビシャーンは、いつも大きな武器をもって、悪い魔物たちから天界や人間界を守っています。
人間たちからは「厄除け」の神様として慕われていて、ビシャーンはいつも闘いで大忙しです。それに、少しでも気を抜くと、すぐに魔物たちがスキをついて襲ってくるので、いつもピリピリと注意していなければなりません。
「はぁ・・・」
ビシャーンは、大きなため息をつきました。
最近は特に魔物退治で忙しくて、とても疲れていたからです。
「なんで俺はいつもいつも闘いばかりなんだろう・・・」
ビシャーンはそう呟いてガックリとうなだれました。
確かに、他の七福神は開運や夫婦円満、長寿延命、商売繁盛など、平和な役目、幸せな役目をもっている神様ばかりで、魔物と闘うような大変な役目はビシャーンだけなのです。
「もう、嫌だなぁ・・・」
ビシャーンはそう言って、また大きなため息をつきました。
と、そんなビシャーンの耳にポロンポロンベベンと、音楽が聞こえてきたのです。
どこからともなく聞こえてきた音楽は、とても美しく、ビシャーンは思わず音のする方へと歩き出していました。
徐々に音が大きくなっていきます。
「あっ!べんてんちゃんか!」
美しい音は、弁財天のべんてんちゃんが奏でていた琵琶の音色だったと分かったビシャーンは、べんてんちゃんの音楽を2人の神様が聴き入っているのにも気付きました。
寿老人のじゅろじぃと、福禄寿のろくじぃでした。
2人とも長寿延命を司る人気の神様です。とても穏やかで、いつもニコニコしています。
「おや、ビシャーンか。珍しいのう」
じゅろじぃがビシャーンに気づいて、そう言いました。
「音楽が聞こえてきて、辿ってきたんです」
ビシャーンはそう言って、琵琶を奏で続けるべんてんちゃんを見ました。
べんてんちゃんは目を閉じて自分の音楽に耳を傾けながら、心地よさそうに演奏を続けています。
「実に良い音色じゃろう」
ろくじぃも気持ちよさそうに目をつぶって、べんてんちゃんの演奏を楽しんでいるようでした。
「して、いつも魔物との闘いに明け暮れて、血気盛んなビシャーンが、なぜこんなところに迷い込んできたのか、聞いても良いかの?」
じゅろじぃがそう聞いたので、ビシャーンは答えました。
「実は、その魔物との闘いに疲れてしまいまして・・・。確かに俺は厄除けや魔除け、厄払いという大切な役を担っているのは分かっていますし、これが天界にも人間たちにも必要なものだという事も、とても誇り高いお役目だという事も、よく知っています。でも、最近どうにも忙しくて、疲れがたまっていて・・・。いつもピリピリと魔物の気配ばかり気にしていては心もすり減ってしまいますし、武器を振り回して魔物を撃退するのにも身体が悲鳴をあげていて・・・それで、もうこんなのは嫌だ、と弱音を吐いていたら、べんてんちゃんの音楽がどこからともなく聞こえてきたんです」
ビシャーンの話を聞いていたじゅろじぃとろくじぃは、ふぉっふぉっふぉ、と鷹揚に笑い声を上げました。
「そりゃそりゃ、お前さん、大変だったの。いつもわしらの事や人間たちの事を守ってくれて助かっとるが、そんなお前さんだって、当然疲れる時もあるんじゃろ。誰にだってそういう時はある。普通の事じゃ。気にするでない」
じゅろじぃがそう言うと、今度はろくじぃが
「きっと、今のお前さんには、べんてんちゃんの音楽が必要だったんじゃろう。ささ、もっと近くで心ゆくまでべんてんちゃんの音楽に癒されるが良い。べんてんちゃんの琵琶は魔法の琵琶なんじゃよ。天から贈られた貴重なもので、べんてんちゃんにしか弾く事ができないものなんじゃ。そして、その琵琶の音色をひとたび聞けば、力がみなぎり心身が癒され、正しく進むべき道を示してくれると言われておる」
こう言いました。
「そんなにすごい琵琶なのですね・・・」
ビシャーンはそう言って、改めて琵琶の音色に耳を傾けました。
すると、どうでしょう。
ビシャーンは、自分の身体に力がみなぎってくるのを感じました。それに、数々の闘いで身体中についた傷も、みるみるうちに治っていきます。
ついこの前闘った厄介な魔物につけられた大きな傷もきれいに治り、ビシャーンは身体中の調子が良くなっていくのを実感しました。
それに、不思議な事に、べんてんちゃんの音楽はビシャーンの心にも何かを語りかけるように染み込んでいき、ビシャーンは、あんなにも魔物と闘う事に疲れて嫌になっていたのに、そんなネガティブな気持ちはどこかへ飛んでいってしまったように消えて無くなりました。
やる気に満ちて、また天界と人間界をしっかり守っていこう、これは自分にしかできない大切な役目であり、仕事なんだ、と思えるようになっていました。
「べんてんちゃん、すごいよ・・・!」
ビシャーンは感動と感謝の気持ちでべんてんちゃんを見つめました。
じゅろじぃもろくじぃも、そんなビシャーンの様子をニコニコ笑顔で見守っていました。
しばらくして、べんてんちゃんの演奏が終わりました。
「じゅろじぃ、ろくじぃ、聴いてくださってありがとうございます」
べんてんちゃんは丁寧におじぎをして顔を上げました。
「あら、ビシャーンじゃない。珍しいお客さんだわ!」
そしてビシャーンの存在に気が付いて、嬉しそうにそう言いました。
「べんてんちゃん!ありがとう!君のおかげで、僕は助かったよ!」
ビシャーンはべんてんちゃんにお礼を言いました。
そして、自分が魔物たちと闘う事に疲れてしまっていた時にべんてんちゃんの琵琶の音が救ってくれて、怪我も直してやる気も取り戻してくれた事を伝えました。
べんてんちゃんはその話を聞いて、嬉しそうに微笑みました。
「お役に立てて良かった。私の琵琶はね、不思議な力を持っているの。この力をしっかり発揮できるようにいつも一生懸命練習しているのよ。その成果が出て良かったわ」
べんてんちゃんの演奏はもちろん、その美しい笑顔に、ビシャーンは更に癒されました。
「よし!今日も天界と人間界を魔物たちから守るぞ!!」
ビシャーンは、そう叫んで、べんてんちゃんにもう一度お礼を言い、じゅろじぃとろくじぃにも挨拶して、自分の持ち場へと帰っていきました。
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